「私たちはみな、リーダーである」
スタンフォード大学で心理学の教鞭を執る著者が、授業で必ず口にする言葉である。この考え方こそ、リーダーシップの基盤であり、原理原則である。これはアメリカの一流大学の学生に限ったことではない。私たち一人ひとりにはリーダーになる能力があり、そうなるべきなのだ。それを素直に信じられるかどうかは、自分はリーダーだと自負があり、自分の能力に自信が持てるかどうかの違いにすぎない。
私たち一人ひとりが「自分が今、何をすべきか」を決定して、主体的に最終的な判断を下し、一体となって最善の道へと進んでいく。これが、仕事の現場で最高のパフォーマンスを発揮するために欠かせない。
リーダーシップを備えた人が影響を与え合う職場は、組織として強くなる。そして、リーダーシップを発揮する働き方は、その人個人を成長させる。リーダーシップとは、生き方であり、働き方でもある。
人間性心理学をはじめとする心理学的エビデンスや脳科学の知見などに支えられ、伝統的な知恵と科学的な裏付けをブレンドした最先端のリーダーシップ。これが「スタンフォード式 最高のリーダーシップ」である。これを身につけることにより、リーダーとして、チームや組織で成果を出せるようになるのだ。
著者は、めざすべきリーダー像として「アサーティブ・リーダー」を提唱する。「アサーティブ(assertive)」とは、直訳すると「主張型」「積極性」という意味だ。アサーティブ・リーダーになるためには、4つのリーダーシップを身につけなければならない。
(1)Authentic Leadership(本質的なリーダーシップ)
(2)Servant Leadership(支援するリーダーシップ)
(3)Transformative Leadership(変容をもたらすリーダーシップ)
(4)Cross-Border Leadership(壁を越えるリーダーシップ)
アサーティブ・リーダーは、積極的に主張し、人を動かす。エゴと謙虚さのバランスをうまくとって、弱さを内包した本当の意味での強さを身につける。さらには、自分自身を尊重し、人を否定することなく、自分とチームの利益のために行動できる。先述した4つのリーダーシップを兼ね備えることにより、人としての厚みが増す。やがて、その存在自体がチームを引きつけ、求心力を高めていくのだ。
リーダーは仕事上の役割だが、リーダーシップは個人のためのスキルである。一人ひとりがリーダーシップを発揮することが、成果を出し続け、自分を成長させるうえで重要なのである。
本要約では、4つのリーダーシップのうち、「オーセンティック・リーダーシップ(Authentic Leadership)」「サーバント・リーダーシップ(Servant Leadership)」の2つを紹介する。
まず、4つの中で土台となるのが、「オーセンティック・リーダーシップ」だ。オーセンティックな状態とは、自己を知り、ありのままの飾らない姿を指す。嘘や気取りがなく、本当の自分を表現することで、周りの人に信頼感を与える。
オーセンティック・リーダーシップを磨くには、次の5つの方法がある。(1)「弱さ(ヴァルナビリティ)」を認める、(2)「役割性格」を越える、(3)「人」と比べない、(4)自分の「生涯の大きな目的」を見つける、(5)「超・集中状態」になる。
この5つを実践すると、自己を知ることができ、それが他者理解にもつながっていく。すると、他者の感情を感じながらも客観的でいられる「コンパッション」な共感ができるようになる。これは、部下の気持ちを理解した上で解決策や目的、とるべき行動を示すのに役立つ。
これら5つの方法は連動している。1つの方法がうまくいけば、他の方法もうまくいくようになり、オーセンティック・リーダーシップ全体が高まっていく。
ここでは、オーセンティック・リーダーシップを磨く5つの方法のうち、(1)「弱さ(ヴァルナビリティ)」を認める、(2)「役割性格」を越える、の2つをとりあげる。
(1)については、自分の弱さを受け入れ、さらけ出すことである。これにより、人はあなたを、「取り繕いがない、常に本心でいてくれる存在」だとみなし、信頼するようになる。
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