「スーパーマリオ」の生みの親である宮本茂はかつて、「ニューヨーカー」誌のインタビューにこう答えた。「実用的でないものは何でも遊びになる。つまり遊びとは、動物として生きていくのに必要でないことを、あえてすることなのだ」
遊びに本質的な機能がひとつあるとすれば、それはクリエイティブ思考と柔軟な脳の発達を促すことである。柔軟な発想は遊びの中で鍛えられるものだ。クリエイティブな仕事で最善の結果が出るのは、真剣な時間と遊びの時間がうまく組み合わさったときである。遊び心は、常識的な考え方からの脱却を促す。
加えて、遊ぶことの多い大人はストレスを感じにくい。最近の調査によると、彼らはストレスをうまく扱い、人生により満足し、より多方面で成功を手にしているという。
ある物事に急に夢中になった結果、普通ではない才能を発揮し、芸術家になるという人は少なくない。
世界観や自己認識に永続的な変化を起こし、その人自身と活動が一体化するような経験を「結晶化(クリスタライジング)」という。そのような経験は「これをやりたい」という強いインスピレーションを呼び起こす。そしてその夢を追い続けるために、自分を成長させようと努力を促す。こうした情動は「他者と比較して評価を得たい」という気持ちとは明確に異なっており、純粋に自分の側を向いている。
長い道のりを経て夢を現実にできる人は、未来についての楽観と、目標に近づくための現実的な戦略を調和させることができる。すなわちインスピレーションと努力、夢見ることと実行することを、うまくブレンドできるのだ。
夢を見るとはどういうことだろうか。心理学者のジェローム・L・シンガーは、「肯定的かつ建設的な夢想(マインドワンダリング)」という表現を編み出した。シンガー曰く、多くの人は「夢想を楽しみ、時間をとられることを厭わないどころか、むしろ単純作業をしている時や暇な時に積極的に夢想にひたることで、今後の計画を立てている」という。
こうした夢想は、決して時間の無駄にならない。それどころか自分が何を考え、どう感じているかを知るための、かけがえのないツールとなる。夢想は未来を創造する第一歩なのだ。
また夢想と同様に、ウォーキングなどの気分転換も、ムダなものに固執している気持ちを解放し、考え方を建設的な方向に向かわせてくれる効果を持つという。
創造という行為は、しばしば孤独の中で展開されていく。クリエイティブ思考の人は革新的なアイデアをひねり出すため、まずひとりきりの環境を必要とし、そのアイデアを概念や製品にまとめる段階に至って、はじめて共同作業をする。
ひとりで内省すると、脳は情報をうまく処理し、記憶をクリアにし、つながりをつくり、アイデンティティを確立してくれる。そして感情をコントロールし、経験から意味を読み取り、さらには道徳的な判断を下せるようになるのだ。
創造のもととなるひらめきや、これまでと異なる考えは、直感と好奇心から始まる。
ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンと共同研究者のエイモス・トヴェルスキーの理論によると、思考のプロセスは「システム1」と「システム2」のふたつから成り立っているとされる。
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