競合先は必ずしも同じ業界の同じ形態のものとは限らない。自分のブランドが提供するベネフィットがどのような競合と市場を構成していくべきか。これを俯瞰することは、ブランド戦略を立てる際に重要とされる懸案事項の1つである。
例えば、ある万年筆の競合は何かを考えてみよう。競合は別の万年筆だけでなく、高級ボールペンかもしれない。紙に書く機能という意味では、100円のボールペンかもしれない。また、文字を記すという意味では、パソコンやタブレットも競合として考えられる。文字をコミュニケーション手段の1つと考えると、電話もそうかもしれない。
さらに視点を変えると、万年筆はギフトで購入されることが多いことに気づくだろう。このとき、競合は、ギフトの検討候補となるネクタイだと捉えられる。そうすると「お父さんが父の日にほしがっているのはネクタイではなく万年筆ですよ」というメッセージが有効だといえる。このように、万年筆同士の比較だけでは、もっと大きな市場を取り損ねてしまう。
マーケティングとブランディングは、「消費者の認識に作用して、消費者行動に必然性を提供する企業活動」という点では共通している。だが、その役割には違いがある。マーケティングの最も重要な役割は、属性の順位を転換して「いい○○」を定義することである、そして、「いい○○」の新しい定義が市場を創造していく。消費者の嗜好が変化したから追いかけるのではなく、新しい価値を提案して変化をリードするのがマーケティングである。
一方、ブランディングは、ブランドの意味の確立をめざす。その過程で重要なのはパーセプション、つまり認識や知覚に影響を与えることであり、市場創造もブランディングも認識管理が必要となる。
ブランドの意味管理・意味づくりの活動を、ブランディングと呼ぶ。そしてその意味を具現化するのがブランドマネジメントである。
ブランドマネジメントの要諦は「市場」「ターゲット」「ベネフィット」の3つだといわれている。市場を定める際のポイントは、確立した市場を選ぶのではなく、競合と競い合う場を新たに市場と定義することだ。そしてターゲットとしては、既存の愛用者よりも、確立した意味やベネフィットに共感してくれる消費者層を据えるべきだ。さらに、ベネフィットに関しては、技術の進化によって生まれた「機能」ではなく、ブランドから得られる「消費者の期待」、その期待値を適切に設定しなければならない。
戦略を立てるときに注目すべき要素は、「目的」と「資源」に集約される。この場合、戦略を「目的達成のための資源利用の指針」と解釈すると理解しやすい。勝負において、論理的に勝つための第一歩が、目的を明確に意識することだ。目的が曖昧なままでは、目的が達成されたかどうかもわからない。マーケティングの活動でも、目的を明確にせずKPIを達成したとしても、KGIを達成できないことがある。
一般的に、競争に勝つときには、資源に恵まれているものだ。ただ、ジャイアントキリング(自分より強大な競合に勝つこと)の要諦は、現有資源をいかに強化するか、あるいは競合に資源をいかにうまく使わせないかである。こういった状況では、見えにくい資源を見通す視点が欠かせない。
「現場の声を聞こう」。これは、ビジネスの調子が悪いときによく聞くフレーズだ。とはいえストレートに聞くだけでは、単なる不満が噴出するだけのことも少なくない。現場の声を聞くのは、顕在化していなかったり言語化していなかったりする、現場でしか得られない知見を手に入れるためである。それを引き出すために効果的な3つの質問を紹介する。
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