ニュージーランドは495万人の小国であり、人間より羊の数のほうが多いといわれている。そんな国で、もっとも熱狂を呼んでいるのがラグビーだ。ラグビーのニュージーランド代表は「オールブラックス」と呼ばれ、全ニュージーランド人の誇りとなっている。
オールブラックスはあらゆる団体スポーツ競技において、世界で最も勝率が高い。だからニュージーランドでは「勝ってあたりまえ」という空気が流れており、「オールブラックスが負けると、株価が下がる」とまことしやかに語られるほどだ。
人口500万人に満たないこの国から、なぜ常勝軍団が生まれたのか。
まず大きな理由として、ニュージーランド独自の民族的アイデンティティーが挙げられる。ニュージーランド独自のラグビー文化は、ヨーロッパ人、先住民マオリ、各島嶼(とうしょ)から移住してきたさまざまな民族(アイランダー)たちが、お互いのアイデンティティーと文化を融合させることで形成されたものだ。
次にラグビー環境のすばらしさがある。ニュージーランドでは男子のほとんどが、幼少期からラグビーボールと接する。どの公園でも気楽にラグビーのできる環境が整備されているし、小学校ではラグビーの授業が行われる。中学以降は学校もしくは地域ごとにクラブチームが結成され、そこで才能を認められると、オールブラックスのユースチームに選出される。
さらに、優れた指導者が揃っていることも大きい。著者も大学時代、のちにオールブラックスの監督となるグラハム・ヘンリーの指導を受けた際、勝てるチームへと変革するその手腕に脱帽したという。
オールブラックスの強さの背景にあるのは、あたりまえのことを愚直にやりきる「凡事徹底」の姿勢だ。彼らは基本スキルを確認するのに、高度な技を習得する時間の数倍をかける。ささいな連携ミスでチームプレーを乱せば、すぐに他の選手に替えられてしまうことを、彼らはよく理解している。こうした厳しい環境だからこそ、オールブラックスは世代を超えて優れた人材を生み出し、勝ち続けられるといえる。
高いプライドをもって、凡事徹底を日々心がけることは、「インテグリティ(Integrity)」に結びつく。インテグリティとは、一貫した誠実さ、高潔さなどを意味する。グラウンドのプレーだけでなく、1日の行動や振る舞いすべてを、重要なものとしてとらえて生きる。勝ち続ける組織は、こうしたインテグリティをしっかり身につけている。
そんな彼らの意識と行動を見ていくと、5つの重要な共通点が見つかった。(1)チームへの貢献、(2)リーダーシップに対する考え方、(3)コミュニケーション力、(4)戦略を準備すること、そして(5)マインドセットである。ここからはこの5つの勝利の原則について解説する。
ニュージーランドのラグビー選手は、「組織の一員として戦う」ということに対してとてもポジティブだ。「勝つために、自分の持っているスキルを、いかにチームプレーに適合させるか」という真の「組織への貢献精神」があるからだ。
ニュージーランドのラグビーは、日本の「上意下達」のシステムと異なり「合議制」である。
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