Mobility 3.0

ディスラプターは誰だ?
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おすすめポイント

自動運転で交通事故がゼロになる。無料モビリティサービスが普及する。自動運転や電気自動車が実用化して、インフラとして組み込まれた社会では、モビリティはこのように大きな変貌を遂げるという。アクセンチュアが予測する、この「モビリティ3.0」の世界は、そう遠くない未来である。

変革が進むモビリティの世界で覇者となるのは、製造業の頂点に君臨する自動車メーカーか。それとも、情報力で他社を圧倒するグーグルか。はたまた、資金力で競争に勝とうとするソフトバンクか。生き残りを賭けた戦いはすでに始まっている。

本書は、世界を代表するコンサルティング会社であるアクセンチュアが「CASE・MaaS時代」を多角的かつ綿密に分析した一冊だ。モビリティが生み出す新たなビジネスモデル、通信・ハイテク・金融・エネルギー業界のビジネスチャンスから、自動車メーカーの生存戦略までをカバーしている。モビリティ3.0の時代を迎えるにあたって、視野に入れるべき戦略の立て方、先進的な取組事例が充実しており、参考になる点が多い。

私たちはつい目先のビジネス機会を追いがちだ。だが、こうした環境の変化に目を向けることも極めて重要であることを、著者たちは教えてくれる。モビリティを取り巻くサービスや技術領域でのビジネスチャンスが次々と生まれている現在。このビジネスチャンスを掴むのは今しかない。

ライター画像
木下隆志

著者

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 モビリティチーム
川原 英司
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター
東京大学卒業後、日産自動車、三菱総合研究所、A.T. カーニーを経て、アクセンチュア参画。自動車関連を中心に経営コンサルティングを数多く手掛ける。経済産業省、国土交通省、NEDOなどで各種委員を歴任。青山ビジネススクール非常勤講師(経営戦略論)、神戸大学経営学部非常勤講師なども務める。主な著書に「自動車産業 次世代を勝ち抜く経営」(日経BP、2011年)、「電気自動車が革新する企業戦略」(共著、日経BP、2009年)、「情報革命と自動車流通イノベーション」(共著、文眞堂、2000年)等がある。

北村 昌英
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター
関西学院大学卒業後、ソフトバンクを経て、アクセンチュア参画。通信・自動車関連企業を中心に、事業戦略、デジタル活用戦略(AI、IoT等)、M&A、グローバル戦略等に多数従事。戦略策定だけではなく、事業の早期立ち上げに向けたPoC(実証実験)、パートナリング構築支援も実施。2014年より2年間、早稲田大学大学院非常勤講師(コンサルティング実務)。

榮永 高宏
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター
慶應義塾大学卒業後、アクセンチュア参画。金融・金融参入企業を中心に、中期経営計画、金融参入戦略、デジタル活用戦略(Blockchain、IoT等)、事業戦略、M&A、マーケティング戦略等に多数従事。

伊藤 剛
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター
2000年東京大学法学部卒業後、大手シンクタンクを経て、2012年よりアクセンチュア参画。公益事業学会政策研究会メンバー。主に素材・エネルギー領域を中心に、制度設計、企業・事業戦略、組織設計、マーケティング・営業戦略、新規事業立案等に従事。主な著書に、『進化する電力システム』(東洋経済新報社)、『まるわかり電力システム改革キーワード360 』(日本電気協会新聞部)、『エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ』(日本経済新聞出版社)がある。

矢野 裕真
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター
青山学院大学卒業後、日系コンサルティング会社、プライベートエクイティ投資会社を経てアクセンチュア参画。Harvard Business School Executive Program修了(アルムナイメンバー)。自動車業界をはじめとする製造業を中心にデジタルテクノロジーを活用した事業開発や競争戦略から始まり、グローバル各国展開やM&A、実装に向けた実務支援まで企業価値向上に向けた豊富な支援経験を有する。

藤野 良
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 シニア・マネジャー
東京大学卒業後、アクセンチュアへ入社。エネルギー関連企業を中心に、事業戦略、新規事業創造、デジタル活用戦略(AI、IoT 等)等の戦略立案に留まらず、オペレーティングモデル設計・戦略実行フェーズまで、多数従事。

佐藤 有
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 シニア・マネジャー
横浜国立大学卒業後、図研にて設計ソリューション事業の海外展開リーダー(ドイツ赴任)、A.T. カーニーを経て、アクセンチュア参画。自動車メーカー/自動車部品メーカー、および周辺のハイテク・通信業界においてモビリティサービス、コネクテッド・IoT・5G等を含む戦略策定、M&A戦略・PMI、協業による新規事業構想、等を中心とした戦略コンサルティングに従事。

中村 朝香
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジャー
慶應義塾大学卒業後、アクセンチュアへ入社。金融・金融参入企業を中心に、各種事業戦略、金融参入戦略、M&A、デジタルマーケティング戦略、デジタル活用戦略(Blockchain、IoT等)等に従事。

吉井 勇人
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジャー
京都大学卒業後、アクセンチュアへ入社。金融・金融参入企業を中心に、各種事業戦略、金融参入戦略、M&A、マーケティング戦略、先端テクノロジー活用戦略(Blockchain、AI等)等に従事。

本書の要点

  • 要点
    1
    自動車産業に変革をもたらすCASEとは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared/Service(シェア/サービス)、Electric(電動)の頭文字を取ったものである。
  • 要点
    2
    生産財として使用されるクルマは、生み出す期待収益が変わらない限り、価値を維持することが可能である。そのとき、期待収益を最大化させるというアセットマネジメントへのニーズが高まってくる。
  • 要点
    3
    電気自動車を「動く蓄電池」として活用すれば、再生可能エネルギーの課題解決策となる。

要約

CASEがすべてを変える

自動車業界を変革させる「CASE」とは?

近年「CASE」という言葉をよく耳にするのではないだろうか。CASEとは、自動車業界の4つの変化点を示す単語の頭文字を取ったものである。

最初のCは「Connected(コネクテッド)」を表す。2020年代には、全車両にコネクテッドが搭載される。モビリティ機能の一部がクラウドに移行されて、高度化する。そして、クルマと顧客がつながり、他のデータと連携することで収益チャンスが増える。

次にAが「Autonomous(自動運転)」である。2020年代後半には、完全自動運転車が普及する見通しだ。これにより、移動性能面でより安全、快適になり、環境負荷の軽減が図れる。くわえて、自動走行中の移動時間や空間を活用した、新たな価値提供サービスの創出が期待できる。

そしてSが「Shared/Service(シェア/サービス)」である。所有から利用へのシフトが進むと、ユーザーとオーナーをつなぐプラットフォーマーのサービス機能・マッチング機能が重要な鍵となる。車両、スペース、エネルギーなど多方面でのシェアが進み、アセット効率が向上するはずだ。

最後にEが「Electric(電動)」である。自動車の電動化により、構成部品の汎用化が進み、ソフトウェアによる制御も加速する。 汎用デバイスやソフトウェアにおいてスケールを拡大したプレイヤーの競争力が高まる。さらには、大量に普及するEVバッテリーを活用した、新たなエネルギービジネスのエコシステムが登場する。

CASEは掛け算でモビリティを変化させる
jossdim/gettyimages

CASEとは単に変化を示すポイントではない。例えば、C×Aで遠隔からのリモートコントロール、A×Sで無人配達。このように、C、A、S、Eそれぞれを掛け合わせることで、商品構造、バリューチェーン、ビジネスモデルなどが非連続的に変化し、脅威と機会を生み出すのである。

CASEからどのようなビジネスが生まれるのか?

モビリティアセットマネジメント

クルマは自分で乗るための消費財から、収益を生む生産財へと変化する。現状では、クルマの資産価値は年々下がっていくのが常識だ。

しかし、クルマが生産財として使用されるようになると、そのクルマが提供するサービスの期待収益が変わらない限り、価値を維持することが可能となる。そうなると、モビリティサービスを提供する個人・法人にとって、いかに効率的に収益を最大化させるかという「アセットマネジメント」へのニーズが高まってくるだろう。

4つのサービスモデル

アセットマネジメントには、次の4つのサービスモデルがある。まず1つ目が「フリートマネジメント型」である。車両は顧客保有で、顧客がモビリティサービスなどに使用するモビリティアセットの収益最大化をサポートする。例えば、走行データ、需要データ、それらをベースにしたマッチングを提供することで、顧客はクルマの使い方、走らせ方、メンテナンスなどを最適化し、収益を最大化させることができる。そして、その対価としてサービス料を受け取るというモデルだ。

2つ目が「長期サブスクリプション型」である。車両はアセットマネジメントサービスを提供する事業者自身の保有となる。また、固定顧客がモビリティサービスに使用するモビリティアセットの収益最大化をサポートする。いわゆるCaaS(カー・アズ・ア・サービス)やVaaS(ビークル・アズ・ア・サービス)に相当する。サービスをパッケージにして、月額課金、従量課金、それらを組み合わせた料金体系で提供する。

次に3つ目が「短期サブスクリプション型」である。車両は自社保有で、不特定のモビリティサービス事業者やその利用者にモビリティアセットを貸与し、顧客ポートフォリオを最適化する。これにより、自社の収益を最大化する。自社保有の車両を、その時点で最も収益性の高いサービス・プロバイダーに貸与し、そのサービスに有用なサービスを併せて提供する。

最後に4つ目が「運用型」である。顧客が保有するモビリティアセットの運用委託を受けることで、使用先を最適化し、収益最大化を支援する。つまり、金融資産における投資顧問サービスのようなモデルだ。

CASEが生み出す事業機会

エネルギー業界が注目する電気自動車
https://www.facebook.com/PlargueDoctor//gettyimages

CASEにより、ビジネスモデルが大きな転換点を迎える。そして、通信、ハイテク、金融、エネルギーの業界で新たな事業機会が生まれる。本要約では、エネルギー業界に生まれる新たな事業機会を紹介する。

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要約公開日 2019.09.16
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