2006年、経済産業省は「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、社会人基礎力を提唱した。これは3つの能力に分類され、さらに12の能力要素に分けられる。
まず、「前に踏み出す力(アクション)」として、主体性、働きかけ力、実行力がある。次に、「考え抜く力(シンキング)」は、課題発見力、計画力、創造力から成る。そして、「チームで働く力(チームワーク)」は、発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力から構成される。本書では、社会人基礎力を「多くの仕事において共通する、良い成果を出すためにベースになる体幹力」というイメージでとらえている。
自分の将来について真剣に考える人ほど、「大学生のうちに個別の専門スキルを養おう」とするものだ。しかし、専門スキルは、実践を通して身につけることが重要視されている。企業側は、大学生のうちに身につけてほしいと考えている能力として、主体性や粘り強さ、チームワーク、コミュニケーション力などを挙げている。まさに社会人基礎力といえる。
社会人基礎力の各能力要素は、日々意識し、試行錯誤を重ねて少しずつ培っていくものといえよう。対人関係、部活、バイトなどで、社会人基礎力の要素を意識して行動していくのだ。もちろん、社会人になってから業務を通じてそれらを身につけることも可能だ。しかし、自分の思考や行動を振り返る時間をとりやすい学生のうちにこそ、時間をかけて社会人基礎力を高めていくのが理想的だ。
社会人基礎力を構成する3つの能力とは何か。まずは、目的を設定し、現状とのギャップとそれを埋めるための計画について考え抜く力(シンキング)。考え抜いた末に、その目的を達成すべく、主体的に行動する力(アクション)。そして、多様なメンバーとともに、互いを柔軟に受け入れ、周囲の様子を把握しながら目的を実行していく力(チームワーク)だ。
社会人基礎力の12の能力要素は、いずれも社会人にとって大切な要素であるが、すべてに秀でている必要はない。これらを、「自らを測定するものさし」として活用するとよい。自分の得意な力や持ち味は何か。今の組織は自分にどの力を求めているのか。こうした点について、自身を振り返ることができる便利なツールなのだ。社会人基礎力は、職業、職種、業種、職位、外資・日系の別を問わず適用が可能である。
生産年齢人口の減少、第四次産業革命やSociery5.0と呼ばれる世界的な技術革新に伴い、日本は大きく変化している。そんな激動の時代の中で、私たちのキャリアライフはこれまで以上に長くなっていく。自分のスキル・強みを生かした、多様なキャリアライフを柔軟に歩んでいくうえで、社会人基礎力の各能力要素が大切になるのだ。
本要約では、12の能力要素のうち、「規律性」「創造性」について紹介する。
まず、規律性の奥義は、「社会人としてのマナーを身につけ、周りに迷惑をかけないビジネスパーソンになるべし!」ということだ。規律性は「チームで働く力(チームワーク)」の能力に分類されている。
組織の一員として働くうえで、規律性を守ることが、組織の成長や業績の達成を促すベースとなる。むかで競争のように、メンバーの一人でも、先頭の人と違う方向に行こうとすると、進みが遅くなる。「自分一人くらい」という考えが、組織全体のパフォーマンス低下に影響してしまう。つまり規律性とは、大人としてのマナーであるだけでなく、組織の一員として迷惑をかけない能力だといえる。
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