日本の生産年齢人口は、絶対数でも人口比でも、大幅に減少していく。となると当然のこととして、現行の社会保障制度に綻びが生じるとともに、深刻な人手不足や消費の低迷をもたらし、日本経済をじわじわと蝕んでいくことが予想される。
こうした負の流れに抵抗する有効な手段として、平均寿命の延びに合わせた定年の引き上げが挙げられる。定年の延長には次のようなメリットが期待できる。
まず、年金の支給開始年齢を引き上げるなど、社会保障改革が進むこと。次に、就業者数が増えることで社会保障制度の支え手が増えるとともに、深刻な人手不足も緩和されること。健康寿命が延びることが期待されるので、医療費や介護費の削減につながること。そして、長期にわたって収入が確保でき、将来不安が和らぐことだ。
2006年に「高年齢者雇用安定法」が改正され、社員を65歳まで雇用する企業が増えた。さらにその後改正された内容では、2025年度までに社員を65歳まで雇用することが企業に義務づけられた。その結果、2008年から2018年の10年間で、60歳以上の就業者数は大幅に増えている。
さらに政府は、定年後の継続雇用を70歳まで引き上げる改正案を提出する予定だ。企業の人件費負担が増えるため、まずは「努力義務」とされる予定だが、おそらく5年以内には義務化されるのだろう。
政府の最終的な目標は、日本社会に75歳定年を定着させることだと考えられる。2030年代になる前には、75歳までの雇用が「努力義務」となり、その後は75歳までの雇用が義務化されることになるはずだ。
誰もが75歳まで働くようになれば、高齢者の定義も「75歳以上」へと引き上げられることになるだろう。将来の人口推計に基づけば、2020年の65歳以上の総人口に占める割合は28.9%だ。だが75歳以上を高齢者とすれば、その割合は2030年で19.2%、2040年で20.2%と推計され、現在よりも小さくなる。
では、新たな定義における「高齢者(=75歳以上)」になる前に、どんな備えが必要だろうか。まず、早い段階で今後の人生の資金計画を立てておくことだ。より長く働き、収入を得られるようになったとしても、積み立て分散投資などといった長期の資産運用で定年後に備える必要がある。
もうひとつは、いまのスキルをアップデートする、新しいスキルを身に付けるといったトレーニングを怠らないことだ。スキルといっても、他人に何かをわかりやすく教えられるというのも、立派なスキルである。そのスキルが身に付いている人は、シニアになっても貴重な人材として扱われることになるだろう。
新卒者などを対象にした各種の調査によって、若者の仕事に対する価値観が大きく変化していることが明らかになりつつある。
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