共感資本社会を生きる

共感が「お金」になる時代の新しい生き方
未読
共感資本社会を生きる
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共感が「お金」になる時代の新しい生き方
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共感資本社会を生きる
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2019年11月14日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

本書は「お金」と「食」の専門家である二人が、お金、働き方、市場、都市と地方など、多岐にわたるテーマについて語り合ったものだ。まったく異なる分野を職業にしている二人だが、その根底にあるのは現代社会への違和感である。物質的には豊かなはずの日本だが、文部科学省によると2018年度の小中高生の自殺者は過去最多であり、この30年間増加の一途にあるという。なぜ未来に希望を持てない人がこんなにも多いのか。

「お金」のプロである新井和宏氏は、新しいお金の価値軸を問いかけ、私たちの豊かさの多くを支配している「お金」を再定義する。一方で「食」のプロである高橋博之氏は、生産者と消費者との直接的な関わりを通して、地域や自然と私たちのコミュニティがどのように成り立つかを紐解く。

「共感資本社会」とタイトルに入ってはいるが、「共感をつかってどう儲けるか」という話ではない。儲けた先に幸福が待っているとは限らないのが、現代の社会である。本書が問うのは、お金や資本そのものの本質だ。お金という尺度は世界共通で、不変のもののように映る。しかし本書を読み進めるうちに、この社会がいかに固定化した価値軸で動いているかを認識することになるだろう。

生きづらさを感じたときこそ、変革のチャンスかもしれない。世代を問わず、一読をおすすめしたい。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

新井和宏 (あらい かずひろ)
株式会社eumo代表取締役/鎌倉投信株式会社 ファウンダー
1968年生まれ。東京理科大学卒。1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。公的年金などを中心に、多岐にわたる運用業務に従事。2007~2008年、大病とリーマン・ショックをきっかけに、それまで信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。
2008年11月、鎌倉投信株式会社を元同僚と創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い 2101」の運用責任者として活躍。
2018年9月13日、共感資本社会の実現を目指して株式会社eumo(ユーモ)を設立。2019年9月から、共感コミュニティ電子地域通貨eumo(ユーモ)の実証実験をスタート。貯められない、現地に行かないと使えない、など、ユニークな仕組みで共感が循環する社会の実現を目指している。
著書に、『投資は「きれいごと」で成功する』(ダイヤモンド社)、『持続可能な資本主義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『幸せな人は「お金」と「働く」を知っている』(イースト・プレス)がある。

高橋博之 (たかはし ひろゆき)
株式会社ポケットマルシェ代表取締役CEO/一般社団法人 日本食べる通信リーグ 代表理事/NPO法人 東北開墾 代表理事/『東北食べる通信』創刊編集長
1974年、岩手県花巻市生まれ。青山学院大学卒。岩手県議会議員を2期務め、2011年9月巨大防潮堤建設へ異を唱えて岩手県知事選に出馬するも次点で落選し、政界引退。
2013年、NPO法人東北開墾を立ち上げ、世界初の食べ物付き情報誌『東北食べる通信』を創刊し、編集長に就任。翌年、グッドデザイン大賞候補に選出され、決選投票の結果2位に(グッドデザイン金賞受賞)。2014年、一般社団法人「日本食べる通信リーグ」を創設し、同モデルを日本全国、台湾の50地域へ展開。第1回日本サービス大賞地方創生大臣賞受賞。
2016年、生産者と消費者を直接つなぐスマホアプリ「ポケットマルシェ」を開始。翌年、日本最高峰ピッチコンテスト「新経済サミット」で優勝。
2018年、47都道府県を車座行脚する「平成の百姓一揆」を敢行。「関係人口」提唱者として、都市と地方がともに生きる社会を目指す。
2019年2月14日(木)「カンブリア宮殿」(テレビ東京系列)に出演。
著書に、『だから、ぼくは農家をスターにする』(CCCメディアハウス)、『都市と地方をかきまぜる』(光文社新書)が、共著に『人口減少社会の未来学』(内田樹編、文藝春秋)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    現代は「消費のためにお金を稼ぐ」という構図になっている。だがお金を稼ぐこと自体が目的化すると、本当の豊かさにはつながらない。
  • 要点
    2
    未来のためにいまを犠牲にする働き方を続けていると、生きている実感から遠ざかってしまう。重要なのはいまを生きることであり、目標通りに進まない人生を楽しむ力だ。
  • 要点
    3
    関わりの中で自然や他者と共感し合うことが、人生の豊かさや幸福につながる。人・地域・自然の要素すべてと、しがらみではなくつながりを再構築することが必要である。

要約

【必読ポイント!】「お金」と生き方

共感資本社会とは
CatLane/gettyimages

さまざまな社会問題の根本的な原因は「選択」ができないことにある――株式会社eumo代表取締役であり、鎌倉投信株式会社ファウンダーである新井和宏氏はそう考えている。

選択できる社会をつくるうえで重要なのが、選択肢がある状態にすること、選択できる環境や能力があることだ。それは言い換えれば、「社会に多様性がある」ということである。

対照的に、「お金」は単一の指標だ。お金は競争を促し、それにより経済成長がもたらされた。だがいまでは負けつづけることで精神を病んだり、自殺したりする人が出てきている。

こうした社会を変えるために、新井氏は新たに立ち上げた会社eumoで、金額で表現できないものを排除しない、多様性のあるお金をつくろうとしている。目指すべきは、それぞれの個人が大切にしたい価値基準を大切にできる仕組みや社会であり、これを「共感資本社会」と呼んでいる。

お金とは何か

株式会社ポケットマルシェ代表取締役CEOで、『東北食べる通信』創刊編集長でもある高橋博之氏は、田舎と都会の関わりを対比する。田舎の生活は自然や地域社会との関わりであり、自分の思い通りにはならない。

一方で都会では、コミュニティの煩わしさはないものの、お金を使わなければ衣食住を手に入れるのも難しい。人は関わりの中からいろいろなことを学べるはずなのに、都会の関わり方では合理性しか学べない。こうして心の安らぎや生きる実感がなくなることで、結局はお金が息苦しさを助長している状態にあると、新井氏は指摘する。

お金で解決すると関係性が切れることから、お金には「分断」する特徴があるといえる。「お金で測れないものにも価値がある」とされつつも、経済においては「お金で測れないものは価値がない」という論調があること自体、問題ではないか。

お金になる行為を「ビジネス」、ならない行為を「ボランティア」という人もいるが、そもそも社会のためになることがお金になるべきだと新井氏は考えている。お金はものの交換の際に介在させると便利な「手段」であったはずだ。しかし「貯められる」という特性から、お金を貯める行為そのものを目的にしてしまう人が多い。お金そのものが目的になると、豊かさも幸せからも遠ざかってしまう。

お金は色も表情もなく「のっぺらぼう」であるため、流通するスピードは速く、同質化を促進する。現代の市場では多様性や固有性が無視されており、同質化をできる人材が優秀とされる。どこでも誰でも同じものを生産できるしくみは、多様性を排除してしまう。

本当は農業においても会社においても個性こそが重要であり、違うからこそファンができるというのが新井氏の意見だ。デコボコしているからこそ、相手に足りないものを自分が補えるし、その逆もしかりだ。そしてそれが生きがいにもつながるのである。

二人称の死
baona/gettyimages

人生の時間は限られている。そのことを意識すると、誰かのために生きたくなるものだ。

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要約公開日 2020.03.04
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