さまざまな社会問題の根本的な原因は「選択」ができないことにある――株式会社eumo代表取締役であり、鎌倉投信株式会社ファウンダーである新井和宏氏はそう考えている。
選択できる社会をつくるうえで重要なのが、選択肢がある状態にすること、選択できる環境や能力があることだ。それは言い換えれば、「社会に多様性がある」ということである。
対照的に、「お金」は単一の指標だ。お金は競争を促し、それにより経済成長がもたらされた。だがいまでは負けつづけることで精神を病んだり、自殺したりする人が出てきている。
こうした社会を変えるために、新井氏は新たに立ち上げた会社eumoで、金額で表現できないものを排除しない、多様性のあるお金をつくろうとしている。目指すべきは、それぞれの個人が大切にしたい価値基準を大切にできる仕組みや社会であり、これを「共感資本社会」と呼んでいる。
株式会社ポケットマルシェ代表取締役CEOで、『東北食べる通信』創刊編集長でもある高橋博之氏は、田舎と都会の関わりを対比する。田舎の生活は自然や地域社会との関わりであり、自分の思い通りにはならない。
一方で都会では、コミュニティの煩わしさはないものの、お金を使わなければ衣食住を手に入れるのも難しい。人は関わりの中からいろいろなことを学べるはずなのに、都会の関わり方では合理性しか学べない。こうして心の安らぎや生きる実感がなくなることで、結局はお金が息苦しさを助長している状態にあると、新井氏は指摘する。
お金で解決すると関係性が切れることから、お金には「分断」する特徴があるといえる。「お金で測れないものにも価値がある」とされつつも、経済においては「お金で測れないものは価値がない」という論調があること自体、問題ではないか。
お金になる行為を「ビジネス」、ならない行為を「ボランティア」という人もいるが、そもそも社会のためになることがお金になるべきだと新井氏は考えている。お金はものの交換の際に介在させると便利な「手段」であったはずだ。しかし「貯められる」という特性から、お金を貯める行為そのものを目的にしてしまう人が多い。お金そのものが目的になると、豊かさも幸せからも遠ざかってしまう。
お金は色も表情もなく「のっぺらぼう」であるため、流通するスピードは速く、同質化を促進する。現代の市場では多様性や固有性が無視されており、同質化をできる人材が優秀とされる。どこでも誰でも同じものを生産できるしくみは、多様性を排除してしまう。
本当は農業においても会社においても個性こそが重要であり、違うからこそファンができるというのが新井氏の意見だ。デコボコしているからこそ、相手に足りないものを自分が補えるし、その逆もしかりだ。そしてそれが生きがいにもつながるのである。
人生の時間は限られている。そのことを意識すると、誰かのために生きたくなるものだ。
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