日本のGDP550兆円のうち、医療費が43兆円、介護費が12兆円を占めている。医療・介護業界に雇用されている人材は60万人だ。自動車関連の製造費出荷額が55兆円、雇用が550万人だから、その大きさがわかるだろう。
医療・介護は、その内実がわかりにくいことが課題の一つだ。大半が税と保険で賄われているため、市場のチェック機能がはたらかない。自動車とは異なり、AI導入などで効率化を進めることができず、人件費の比重が7割にも達している。
少子化が進むにつれ、医療・介護の分野が成長産業になっていくのは間違いないだろう。誰しも、人生100年時代の後半部分は医療・介護産業に託すことになる。
現在の国民医療費は43兆円、介護費は12兆円である。団塊世代が後期高齢者になる2025年には、医療費が48兆円、介護費が15兆円と、さらに膨らむことが予想されている。
例えば、初期の糖尿病は自覚症状がなく、気づかずに放っておくと重篤化(じゅうとくか)する。33万人を超える腎臓(じんぞう)透析患者のほとんどが、糖尿病の悪化に起因するものだ。腎臓透析の患者の自己負担はゼロに近く、1人に年間550万円の費用がかかる。そして、透析患者は年々増えており、わずか20年で倍増した。
透析患者にかかる費用から垣間見られるように、この10年間でGDPはほぼ横ばいであるにもかかわらず、国民医療費は3割近く増えている。
著者が東京都副知事になった翌年、病院から受け入れを拒否された重症妊婦が死亡するという出来事があった。8か所の病院で断られ、1時間以上が経過したのちに、やっと受け入れ先が決まったのだ。その後、胎児の命は助かったものの、妊婦は亡くなった。同じような事件が以前にも起きていることを知った著者は、東京都周産期医療体制整備プロジェクトチームを立ち上げることを決めた。
3,400冊以上の要約が楽しめる