誤った情報に振り回されないためには、「エビデンス」(医学的な証明)は重要な判断材料だ。といっても、どのエビデンスも100%正しいわけではない。その結論が示すのはあくまで一面的なことだ。ある食品に関してまったく結論が異なる論文が存在しており、食品メーカーがこれらの中から都合のいいものを使っていることもある。
3つのグループを対象として「この4年間に、ライフスタイルや食べ物をどう変えたか、そして体重はどう変化したか」を調査した研究を例に説明しよう。その研究によると、ポテトチップスを多く食べた人は太る傾向が最も強く見られた一方で、ヨーグルトを増やした人は一番やせる傾向があった。だが、ポテトチップスを増やす人とヨーグルトを増やす人とでは、そもそもの健康に対する意識が違うのではないだろうか。ヨーグルトを増やした人は健康への意識が高く、食生活に気を配っていたからやせたのかもしれない。
企業やそれを取り巻く人々の中には、自分の利益のために真実を歪める人たちもいる。食品の中にネガティブなデータを持つ成分が含まれていたとしても、それ以外のごくわずかな長所のみが強調されることさえある。そうした背景を知った上で、誤った思い込みのもとに行動していることがないか見直してみてはいかがだろうか。
本書では「食の嘘」として16の嘘が紹介されるが、要約ではそのうち3つを取り上げる。
まず、「低脂肪は体にいい」という嘘だ。太る原因は脂肪の摂りすぎではなく、ご飯やパンなどといった糖質だ。カロリーを摂れば摂るほど太るというシンプルな話ではない。
「甘酒や漬物は体にいい」というのも嘘だ。発酵食品は体にいいとされているが、発酵食品ならなんでもいいというわけではないし、過剰摂取はよくない。たとえば「飲む点滴」などと言われてブームになっている甘酒は、糖質の塊だ。100グラム中に含まれる炭水化物量はコーラよりも多い。
「ダイエットすると筋肉が落ちる」というのも、生化学上ありえない。エネルギーを使う順番は決まっている。まず、食べ物から摂取したブドウ糖、次に果糖や乳糖、その後に筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲンという順に使われる。グリコーゲンが尽きるとようやく脂肪が使われるが、体重70キロの人だと、溜め込まれた脂肪だけで数カ月はもつだろう。その脂肪もなくなってはじめて筋肉がエネルギーに変えられるわけだから、体重が減ると筋肉が落ちるというのはまずありえない。
糖質(炭水化物)、脂質、タンパク質の3つを「三大栄養素」と呼ぶ。糖質はエネルギー源として、脂質は細胞膜の構成成分などとして、タンパク質は筋肉や骨を作る成分としてそれぞれ重要であり、どれも欠けてならない。ただし現代人の生活においては、糖質不足で健康を維持できないという状況はめったになく、むしろ糖質過剰で脂質が足りていない人が多い。
では、「バランスのいい食事」とはどんなものか。
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