いま世界は、VUCAと呼ばれる、予測不能で、ディスラプターがなぐり込みをかけてくる時代に突入している。しかし日本企業は、こうした環境に対応する力が極めて弱い。令和に入っても過去の延長戦のような経営を続けているからだ。
平成元年と平成30年の世界時価総額トップ10ランキングを比較してみよう。平成元年では10社中7社が日本企業であったが、平成30年ではトップ10はおろか、トップ50に入っているのも1社のみとなっている。
今こそ会社と社員の関係を抜本的に見直さなければならない。そうでないと、企業としての存在自体も危うくなってしまうだろう。
日本企業の抱える問題点は2つある。リーダーシップの問題と社員個人の問題だ。
まず、リーダーシップの問題だ。VUCAの時代においては、未来の「ありたい姿」を構想し、現状と比較して本質的な課題を再定義する未来志向型経営が求められる。しかし多くの日本企業は、「ありたい姿」を構想できないまま、現状の延長線上の課題をファクト&ロジックで解いているだけである。
次に、社員個人の問題だ。日本企業はこれまで、日本的な雇用・人事制度を行なってきた。つまり、会社の論理が最優先で、社員はいかにそれを効率的に実現するかで評価されてきたのだ。
予測不可能な環境においては、こうした制度は会社に致命的なダメージを与える可能性がある。会社から指示されたことをそのまま実行するのではなく、個人個人が現場で起こっている変化の兆しを察知し、正しい課題設定をして解決していかなければならない。
著者は20年以上にわたり、延べ数百のプロジェクトで戦略構築支援を行ってきた。しかし、その中で忸怩(じくじ)たる思いを感じることもあった。その理由は、コンサルタントとして自信満々で提言した戦略だとしても、大きな成果が出るケースはそのうちの半分にも満たなかったからだ。
一方で、戦略の質がイマイチであっても想像以上の成果をあげるケースもあった。クライアントがその戦略を巧みに「自分事化」して、すごいパワーで実行した場合だ。
成功するケースと失敗するケースは何が違うのか――著者はこの違いを長年考え続け、ある方程式を導き出した。
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