直近の新卒採用市場において、中小企業は苦戦を強いられている。2019年3月卒の新卒有効求人倍率を見てみると、中小企業は9.91倍、大企業は0.37倍とその差は歴然だ。2021年には「3月1日就活解禁」の新卒ルールが廃止されるため、質の高い学生をめぐる戦いはますます過熱するだろう。
今後明らかに労働人口が減少する日本において、どんなに優れた事業計画を立てても実行に移す人財がいなければ意味がない。今や「事業戦略の中に人財戦略がある時代」は終わり、「人財戦略そのものが事業戦略となる時代」に突入しているのだ。そこで本書が提案するのは、「採用ファースト経営」である。
採用ファースト経営とは、「新卒大量採用」「早期育成」「定着化」を3本柱とした、企業の業績を圧倒的なスピードで上げていく成長モデルのことだ。この3本柱を実現すれば、優秀な若手を中心とした活力ある組織となり、業績も伸びつづける。
新卒社員にこだわる理由は、中途採用のコスト効率が悪いからだ。即戦力を求めて中途社員を採用する際、即戦力を求めて中途社員をヘッドハンティングする際、場合によっては年収の50%程度を紹介料として支払わなければならないこともある。しかも彼らが長く戦力として働いてくれるとは限らない。
それならば、質の高い新卒の採用・育成・定着にコミットして、彼らを戦力へと育て上げればいい。デジタルネイティブ世代であり、働き方改革ネイティブ世代であり、そしてダイバーシティ・ネイティブでもある新卒社員たちは、企業の成長力・競争力の源泉となる。
採用ファースト経営を実現するにあたっては、6つの経営課題に着手する必要がある。それぞれについて解説する。
まず、企業ミッションと中期経営計画の見直しだ。
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