「あぁ、やっぱりこの人も同じだ」と、歴史上の偉人に関するマンガを読んだ幼き頃の著者は思った。幼き頃の著者はこういったマンガが大好きで、何冊も読んでいた。
そこで気付いたのが、こうしたストーリーの共通点は「偉人は世の中の人とは違った目で世界を見つめていて、後になって世間の人々は、その偉人の視点が正しいと気付いた」ということである。一般的に信じられていたことが、真実とはまったく異なっていたということは、歴史上たくさんあった。つまり世界とは、疑ってみたほうがいいものなのである。
著者はこれまで一貫して、「世界を違った目で見つめよう」と努力してきた。世の中の常識とは異なる目で世界を見てみると、世の中の人が信じている因果関係とは異なる因果を見つけられることがある。これはまさに絶好のチャンスだ。その因果関係のスキマを狙ってハックすれば、大きな成果を得られるからである。
つまり世界をハックする方法とは、次の2つのステップからなる。
(1)世界を違った角度から見つめ、他人が気付いていない規則性や法則に気付く
(2)その規則性や法則を構成するシステムのスキマに介入する
著者はこの方法を活用して起業。現在は世界の名だたる企業のデジタル戦略について、ともに考えるパートナーとして活躍している。
ハックを行ううえで大切なのは、既存のルール(規則性や法則)を知ることである。ルールがないものはハックできないからだ。そのルールを知る最初の一歩が「世界を疑うこと」であり、それには「観察」「考察」「推察」「洞察」が大事になってくる。
夏休みの宿題であった、朝顔の観察日記を思い出してみてほしい。そこには、以下のように4つの行為が登場していた。
(1)「観察」:変化を見つける→昨日はつぼみだった朝顔が今朝咲いた
(2)「考察」:観察から規則性や法則を導き出す→花とは朝に咲くものだろうか
(3)「推察」:考察によって導き出した規則性や法則の転用先を探し出す→朝に咲かない花もある。なぜ、朝顔は朝に咲くのだろうか。他にはどんな花が朝に咲くのだろうか。この「観察」「考察」「推察」という行為を繰り返して、それぞれが導き出す「変化」「法則」「転用先」の精度を高めていく。
(4)「考察」:観察・考察・推察を同時に行うことで、目の前で現実に起きた事象とまったく異なる因果関係に気づく→朝顔の花が朝に咲くということは「朝に活動する虫が受粉を助けている」または「虫の助けがいらない」のどちらかだろう。
これからの時代は、既存の知識が通用しなくなる可能性が高い。ちょっとした疑問があればGoogleで検索してしまえばいいからだ。知識力だけを見れば、Googleに勝るものは存在しない。
逆に重要になってくるのが、「良質な問い」である。この良質な問いを可能にするのは、子どものときの好奇心だ。子どもの頃、「なぜ?」「なぜ?」を繰り返して、親を困らせたことはないだろうか。私たちは大人になるにつれて、知識を得ていくことで、この「なぜ」という好奇心を失っていってしまう。
しかしこの好奇心を忘れずに保ち、「観察」「考察」「推察」を繰り返し行えば、洞察力はおのずと高まる。「世界を疑う」ということは、「自身の世界観を疑う」ということに他ならない。
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