ドラえもんを本気でつくる

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ドラえもんを本気でつくる
出版社
出版日
2020年02月28日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

著者は研究者として、「ドラえもんをつくる」という幼い頃からの夢の実現に本気で取り組んでいる。本書は、そんな著者が、ドラえもんという存在の定義から技術的なアプローチ、信頼できる仲間との研究などについて記したものだ。

ドラえもんは、あまりにもよく知られている存在だからこそ、定義が難しい。そこで著者は、ドラえもんを機能からではなく社会的承認から定義し、ドラえもんは人ととことん向き合うロボットだと定義した。「四次元ポケットがある」「未来からきた」ロボットをつくるとなると実現は難しそうに聞こえる一方で、「人ととことん向き合うロボット」であれば、実現できそうだと感じないだろうか?

技術面の解説も興味深い。AIはロボットづくりに欠かせない技術だが、ディープラーニングでは、人と向き合うロボットの実現は難しいそうだ。そこで著者は、ディープラーニングとは別のAI技術である「HAI」を活用してはどうかと考えた。

著者は子供の頃に「ドラえもんをつくりたい」という夢を大人に笑われたことがトラウマとなり、一時期はドラえもんを好きだということさえ忘れていたという。しかし現在は、多くの信頼できる仲間を得てドラえもんづくりに邁進している。将来に悩む若者や、そんな若者を見守る立場にある大人に、ヒントを与えてくれる一冊だ。

著者

大澤正彦(おおさわ まさひこ)
1993年生まれ。2011年3月、東京工業大学付属科学技術高校を首席で卒業。同年4月、慶応義塾大学理工学部入学。2014年8月、「全脳アーキテクチャ若手の会」を設立。2015年3月、同大学を首席で卒業。同年4月、慶応義塾大学大学院理工学研究科開放環境科学入学。2017年3月、同大学大学院修士課程修了。2020年3月、同大学大学院博士課程修了。同年4月、日本大学理学部助教に就任。
孫正義育英財団1期生。International Conference on Human-Agent Interaction Organizing Com-mitee (Sponsorship Chair) 2018-2020、HAIシンポジウム運営委員、2019-2020。

本書の要点

  • 要点
    1
    ドラえもんは目の前の人を幸せにする存在だ。ドラえもんをつくることができれば、一人ひとりを幸せにするという考えがスケールし、世の中をよくすることができるかもしれない。
  • 要点
    2
    ドラえもんとのコミュニケーションでは、人間の「次を予測する」という性質を利用した技術がカギとなる。この着想は、自然言語を話せないキャラクター、ミニドラから得たものだ。
  • 要点
    3
    著者がドラえもんを「つくれる」と思えるようになったのは、自分なりの知識と景色、ドラえもんをつくるための活動履歴、そして仲間とチームを得られたからだ。

要約

夢はドラえもんをつくること

ドラえもんはどんな存在?

著者の夢は「ドラえもんをつくること」。幼い頃からの夢だが、大人から笑われたというトラウマから、長く心の奥底にしまい込んでいた。しかし夢は消えず、今、真剣にドラえもんをつくろうとしている。

ドラえもんとはどのような存在か。著者がつくろうとしているドラえもんは、便利な道具をポケットから出してくれる、未来からきたロボットではない。「のび太を幸せにする、心をもった存在」だ。いつものび太のそばにいて、手を差し伸べてくれるドラえもん。そんな、一人ひとりにとことん向き合うロボットをつくることが、著者にとっての夢なのだ。

ドラえもんがイノベーションを起こす
ThitareeSarmkasat/gettyimages

著者は「目の前で困っている人を助けたい」という意識が強く、「世の中全体をよくしたい」という気持ちは薄いという。そう話すと、「目の前の人を助けたいという気持ちがあるんだったら、目の前の人にとらわれるのをやめて、もっと世界全体を見て、世界をよくすることを考えろ」と言われることもある。

だが著者は、ドラえもんは、目の前の人を助けることで世界をよくする存在だと考えている。たった一人だけを助けるロボットがたくさんできれば、一人ひとりを幸せにするという考えがスケールしていく。

ドラえもんが実現する幸せは、世の中の仕組みを変えて人を幸せにする「トップダウン式」ではなく、ドラえもんが人を幸せにして、その結果世の中がよくなる「ボトムアップ式」だ。ドラえもんはそんなイノベーションを生む存在になるのかもしれない。

ドラえもんとAI

ドラえもんはAIか?

「ドラえもんはAIですか?」という質問に対する答えは、「イエス」であり「ノー」でもある。その理由は、質問者によってAIやドラえもんに対するイメージがまちまちで、質問の意図も異なるからだ。

著者がめざすドラえもんは、人と心が通じ、人に寄り添う存在だ。一方、AIには「支配されそう」などといったネガティブなイメージを持つ人も少なくないので、著者のつくりたいドラえもんのイメージとはかけ離れてしまう。

とはいえ、ドラえもんをつくるにあたってAI技術は不可欠で、ディープラーニングによる大量データ処理以外のブレイクスルーが必要だ。心理学や認知科学など、AIの外側にあるものも考慮してシステム全体をデザインしないと、人と心を通じ合わせるロボットはつくれないだろう。

AIの課題
B4LLS/gettyimages

AIの世界は、ディープラーニングの登場によって大きくステージが変わった。AIは画像認識では人間を超えたとまで言われているし、AIが囲碁のプロ棋士に勝ったことも大きなニュースになった。

ただ、AIは人間が予想もしないことをする可能性もある。たとえばAIに、

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要約公開日 2020.04.19
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