著者の夢は「ドラえもんをつくること」。幼い頃からの夢だが、大人から笑われたというトラウマから、長く心の奥底にしまい込んでいた。しかし夢は消えず、今、真剣にドラえもんをつくろうとしている。
ドラえもんとはどのような存在か。著者がつくろうとしているドラえもんは、便利な道具をポケットから出してくれる、未来からきたロボットではない。「のび太を幸せにする、心をもった存在」だ。いつものび太のそばにいて、手を差し伸べてくれるドラえもん。そんな、一人ひとりにとことん向き合うロボットをつくることが、著者にとっての夢なのだ。
著者は「目の前で困っている人を助けたい」という意識が強く、「世の中全体をよくしたい」という気持ちは薄いという。そう話すと、「目の前の人を助けたいという気持ちがあるんだったら、目の前の人にとらわれるのをやめて、もっと世界全体を見て、世界をよくすることを考えろ」と言われることもある。
だが著者は、ドラえもんは、目の前の人を助けることで世界をよくする存在だと考えている。たった一人だけを助けるロボットがたくさんできれば、一人ひとりを幸せにするという考えがスケールしていく。
ドラえもんが実現する幸せは、世の中の仕組みを変えて人を幸せにする「トップダウン式」ではなく、ドラえもんが人を幸せにして、その結果世の中がよくなる「ボトムアップ式」だ。ドラえもんはそんなイノベーションを生む存在になるのかもしれない。
「ドラえもんはAIですか?」という質問に対する答えは、「イエス」であり「ノー」でもある。その理由は、質問者によってAIやドラえもんに対するイメージがまちまちで、質問の意図も異なるからだ。
著者がめざすドラえもんは、人と心が通じ、人に寄り添う存在だ。一方、AIには「支配されそう」などといったネガティブなイメージを持つ人も少なくないので、著者のつくりたいドラえもんのイメージとはかけ離れてしまう。
とはいえ、ドラえもんをつくるにあたってAI技術は不可欠で、ディープラーニングによる大量データ処理以外のブレイクスルーが必要だ。心理学や認知科学など、AIの外側にあるものも考慮してシステム全体をデザインしないと、人と心を通じ合わせるロボットはつくれないだろう。
AIの世界は、ディープラーニングの登場によって大きくステージが変わった。AIは画像認識では人間を超えたとまで言われているし、AIが囲碁のプロ棋士に勝ったことも大きなニュースになった。
ただ、AIは人間が予想もしないことをする可能性もある。たとえばAIに、
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