著者は少年時代、サッカーと数学に夢中だった。サッカーは、先生が言うように「忍耐力や協調性が将来役に立つ」と考えて練習に励んだのではない。単にサッカーが好きだっただけだ。数学も同じで、大人になってから役立つと思ったのではなく、好きで楽しかったからのめり込んだ。
数学を勉強しなかった理由として、「いったい何の役に立つのか、誰も教えてくれなかった」という人がいる。だが、数学が何に役立つかを教えてもらえていたなら、本当に勉強しただろうか。答えはおそらくノーだ。こうした理由は、後付けでしかない。
とはいえ、この人たちが悪いわけではない。教育が悪いために、数学嫌いが生まれているのだろう。
数学は、あなたが役立てようと思えば役立つし、役立てようと思わなければ役立たない。本書を通して数学の本質を知れば、数学を実生活に役立てられるようになるはずだ。
数学とは何をする学問か。多くの人は「計算」と答えるだろう。実際、多くの数学の授業では計算がメインだ。
だが、計算はただの作業にすぎない。ルール通りに行えば誰でも正しい答えを出せるし、電卓やエクセルを使えば考える必要さえない。つまり、数学が計算することを主とする学問なら、「数学=作業」ということになってしまう。本当にそうだろうか?
数学とは何をする学問か――この問いに対する著者の答えは、「数学はコトバの使い方を学ぶ学問」だ。数学において重要なのは、正確に計算することではなく、論理的なコトバを使って問題の構造を把握することである。たとえば、五角形について考えてみると、「しかも」や「ゆえに」のような論理的なコトバで事実をつなげていくことで、面積の求め方を説明できる。つまり、論理的なコトバである「論理コトバ」こそ、数学の主役なのだ。
著者は、論理コトバを端的に表現し、かつ「数学」と「言葉」という2つの概念の間にある距離感を埋める言葉として、「数学コトバ」という表現を使っている。数学コトバの例を挙げると、変換を表現する「言い換えると」「裏を返せば」、対立を表現する「しかし」「一方で」、条件を表現する「かつ」「または」「少なくとも」、仮定を表現する「仮に」、理由を表現する「なぜなら」、結論を表現する「以上より」「つまり」などがある。
数学コトバを使うと、「構造把握→論証→説明」が飛躍的にうまくなる。つまり、ものごとの構造を把握する能力が飛躍的に高まり、1%の矛盾もなく論証する技術が身につき、わかりやすく簡潔な説明ができるようになる。
実は、私たちがする行為のほとんどはこの3つのどれか、あるいは組み合わせで成り立っている。転職も、意中の相手への告白もそうだ。この3ステップを使いこなすことができれば、人生の勝負どころで負け知らずになれると言ってもいい。
ムダに話が長い人は、人の時間を奪う「会話の犯罪者」だ。会話の犯罪者にならないためには、カーナビの話し方をお手本にするといい。
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