学校を卒業すると、大多数の人は社会人として働くようになる。組織の一員として上からの指示に従い、日々の生活を支えるために働く。それは「労働者1・0」の働き方だ。労働者としてのマインドセットしか持ち合わせておらず、常に指示待ちで、いつまで経っても使われる側の人たちだ。自分の時間と才能という自己資産を、他の人に搾取されたままにしている。
その対極にあるのが「資本家」だ。お金を出して、他人の才能と時間を使う立場にいる人たちである。
労働者1・0は自分の身の周りのことにしか関心を持てない。所属している職場で与えられた課題に対応する力だけが求められるからだ。一方資本家は、広く世界を知ろうとし、自分で課題を見つけて変革する力を持っている。
しかし、労働者1・0の人が一足飛びに資本家になるのは難しい。だからまずは「労働者2・0」を目指すべきである。才能を搾取されるのではなく、自らアピールして自分の才能を誰かに売ってやろうという気構えを持つことだ。
自分で主体性を持って働くようになると、所属している会社、狭いコミュニティや人間関係の外にも自分の世界が広がる。たとえ勤めている会社が倒産したとしても、培ったスキルや人脈を活用して、新しい道を開くことができるのだ。
また労働者2・0では、自分自身が働く以外にも収入を得られる方法に気づけるため、資産形成に投資を組み込もうという発想が自然と生まれる。
これから、100歳を超えて生きる人がどんどん増えていくだろう。その年齢まで人間として十分な生活を送るには、人ひとりが65歳までの労働年齢で稼げる現在の総量では足りない。解決策の1つは、若い頃から自己投資してスキルを高め、多くの経験を積んで収入を増やすことだ。しかし、会社が倒産する、自分が病気になるといったリスクがあり、自分の才能を伸ばす方法には限界がある。そこで、得られた報酬の一部を株式投資に回すのだ。
投資とは、自分より優秀で稼いでくれそうな、自分以外の仕組みに対してお金を投ずることだ。言ってみれば、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスに働いてもらうようなものである。自分自身が働ける時間は1日8時間でも、株式に投資すれば、自分が属している企業や産業とは異なるところからもお金が入ってくるようになる。時間あたりの効率が格段に増し、自分の1日の持ち時間を増やすことができる。
しかし、株式投資をすればすぐにリターンが得られるということではない。どんな企業でも、企業価値を高めるには相応の時間が必要だからだ。
投資というと、株価の値動きを見ながら短期で売買を繰り返して利ざやを得るもの、と考えている人も多いだろう。しかし、「投資の神様」と呼ばれているウォーレン・バフェットの手法は全く異なっている。永続的に利益を生み出す利益モデルを持っている企業かどうか、企業買収をするかのような企業価値評価を行なうのだ。そうして選んだ投資先の企業を、オーナーの一人として永久に保有しようとする。実際バフェットは、スキャンダルが起きた企業の暫定CEOとして経営の指揮をとったこともある。
こうしたバフェット流の投資を日本企業に対して実現するために、農林中金で社内ベンチャーを立ち上げた。「買ったら売らずにリターンを挙げる」という運用は実績を積み上げ、2009年には農林中金バリューインベストメンツとして独立する。100億円でスタートした運用資産は、現在3000億円まで成長している。
日本には1800兆円もの個人金融資産があるといわれる。だからといって、日本が豊かな国だというわけではない。
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