新型コロナウイルス感染拡大の影響は、人の「行動様式」を大きく変化させている。仕事におけるこれまでの常識や「あたりまえ」とされていたことが、実はそれほど重要でなかったということを浮き彫りにしているのだ。「出勤」はその最たるものだ。今回の出来事によって「会社に行く=仕事をする」ことではないことがはっきりした。会社に対して提供できる価値と、通勤という行動がリンクしていなかったという人も多いのではないだろうか。
現代は「個」の時代だといわれてはきたが、コロナショック以前の「個」は結局のところそれまでの価値観を前提に考えられてきたところがある。価値観が大きく揺らぐなかで人が自分の人生を生きるためになにを寄りどころにすべきか――著者が出した答えは、本書のテーマである「個人力」、すなわち「ありたい自分のまま、人生を楽しんで生きていく力」だ。
「あたりまえ」が揺らぐなかで重要となるのが、「個」として信念を持ち、自分の新しい働き方や生き方を模索していく姿勢だ。学歴や肩書きなどをすべて取り払った先に残る、本当の自分。それを著者は「Being(ありたい自分)」と表現している。
「Being(ありたい自分)」は自分自身で探すしかない。著者は、自分という金脈は自分自身の中に必ず埋まっているものだという。金脈を見つけるために必要なのは、それを掘り出す勇気を持つこととだ。金脈そのものではなく、「掘るための道具」は積極的に探しにいくと良い。だが、掘り出すのはあくまで自分自身だと意識しなければならない。考える労を惜しんで人から与えられた「金脈らしきもの」に騙されないように気をつけよう。
本書では、「Being(ありたい自分)」を中心として自分が本当に幸せを感じられる充実した人生を作るための思考サイクルを、「Think(考えること)」「Transform(変化)」「Collaborate(協働)」の3つの要素から説明している。それぞれの要素について、順に見ていこう。
「Think(考える)」のプロセスを徹底すれば、「Being(ありたい自分)」が明確になっていく。自分の頭で考えるという行為は、自分の人生を生きることと同義だ。「わたしはこう思う」と決断して行動しなければ、いつの間にか自分に嘘をつく行動をしてしまう。そこで重要なことは、「わたし」を主語にして考え、自分に問いかけるクセをつけることである。
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