人はなぜ目標を達成できないのだろうか。仕事や健康、人間関係、家計など、誰しも本気で取り組みたいと思うことが一つくらいはあるはずだし、それに挑戦もするのに、達成できることは少ない。このことに対して、原因は自分にあると考えている人も多いが、それは大きな間違いだ。
目標達成には、きわめて重要な概念がいくつか存在する。ここでは2つ紹介しよう。「目標を達成できるかどうかは、生まれつきの資質のみでは説明できない」と「目標を達成する能力は、誰でも高められる」である。
アメリカ政府のウェブサイトによると、多くのアメリカ人が新年の目標に「減量」と「禁煙」を挙げているそうだ。どちらも命に関わるため、モチベーションが高まりそうなものだが、それでも多くの人が失敗している。
挫折する理由としてよく挙げられるのが「意志の力」だ。これは一般的に、誘惑に打ち勝つために欠かせないものであり、生まれつきの資質であると考えられている。多くの人は、「世の中には意志の強い人と、弱い人がいる」と考え、挫折しがちなのは自分の生まれつきの資質のせいだと思い込んでいるのだ。
しかし意志力の正体は、一般に思われているようなものではない。心理学では意志の力を「自制心(セルフコントロール)」と呼ぶが、その正体は、おそらく皆さんが想像しているものとは異なっている。
誰だって自制心を持っている。しかしどんなに優れた人物でも、やるべきことが何なのかわかっているにもかかわらず、失敗をしてしまうのだ。オバマ大統領ですら、何度も禁煙に失敗している。
その理由は、自制心の強さが筋肉と同じように変化するからだ。自制心は個人差があるだけでなく、同じ人でも状況によって強くなったり弱くなったりするし、疲労することもある。スポーツクラブでエクササイズを終えた直後のように、何かを苦労してなし遂げた直後は、自制心をかなり消耗してしまっている。すると、他の目標達成が難しくなるのだ。そう考えると、オバマ大統領が禁煙に失敗してしまう理由も理解できるだろう。
自制心に関しては、他にもさまざまな事実が判明している。たとえば、報酬によってモチベーションを上げれば自制心の不足を一時的に補える場合があることや、定期的に自制心が求められる行動をとることで自制心を鍛えられるということなどだ。
目標を達成するには、達成すべき目標を明確に定めなければいけない。「どこか暖かいところに行きたいなあ」と夢想しているだけでは、南の島での休暇は実現しない。
目標を考えるときに重要な視点の一つは、「何」と「なぜ」の考え方の違いを知ることだ。
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