ゼロからつくるビジネスモデル

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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2019年12月12日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ビジネスモデルとは何か。言葉自体はもちろん知っているし、なんとなく意味も理解している。一方で、抽象的でつかみどころがない――要約者にとっては、これが本書を読む前の「ビジネスモデル」に対するイメージだった。

そして読んだ後はというと、その輪郭がはっきりした。本書は頭のてっぺんからつまさきまでビジネスモデル一色であり、著者の言葉を借りれば「1冊まるまるビジネスモデル」の本である。ビジネスモデルについての本はあまたあるが、ここまで体系的にまとめられているものにはなかなかお目にかかれない。

著者の井上達彦氏は、10年以上にもわたってビジネスモデルを研究してきた人物だ。本書には、そんな著者によって、ビジネスモデルの定義から始まり、ビジネスモデルを考えるうえでのプロセス、アイディア発想のためのポイントなどが詳細に書かれている。特に「ビジネスモデルの創造サイクル」は必見で、アイディアを創出するところから、それを試作し、検証するところまでの一連のプロセスは非常に興味深い。

事例が豊富なのも本書の特徴だ。公文式で知られる「KUMON」や高級外車「メルセデス・ベンツ」といった大手企業から、「エムール」「HEROZ」といったベンチャー企業までを幅広く網羅している。

500ページ超と骨太な一冊なのだが、平易な言葉で書かれているため、その内容はいたってわかりやすい。自ら事業を起こしたい社会人や、将来起業を夢見る学生など、ビジネスに興味がある者であれば一度は読んでおきたい良書である。

ライター画像
小林悠樹

著者

井上達彦(いのうえ たつひこ)
早稲田大学商学学術院教授。
1968年兵庫県生まれ。92年横浜国立大学経営学部卒業、97年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)取得。広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授などを経て、2008年より現職。経済産業研究所(RIETI)ファカルティフェロー、ペンシルベニア大学ウォートンスクール・シニアフェロー、早稲田大学産学官研究推進センター副センター長・インキュベーション推進室長などを歴任。「起業家養成講座Ⅱ」「ビジネスモデル・デザイン」などを担当。
主な著書に『模倣の経営学』『模倣の経営学 実践プログラム版』『ブラックスワンの経営学』(以上、日経BP社)、『収益エンジンの論理』(編著、白桃書房)、『事業システム戦略』『キャリアで語る経営組織』(以上、共著、有斐閣)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビジネスモデルとは、「どのように価値を創造し顧客に届けるかを論理的に記述したもの」だ。
  • 要点
    2
    ビジネスモデルを考える方法は、「要素に注目するアプローチ」と「関係に注目するアプローチ」の2種類に大別される。いずれも、「分析・発想・試作・検証」のプロセスに沿って考えていく。
  • 要点
    3
    模倣は創造の母である。いい模倣をするためには、ビジネスモデルの本質を見極める必要がある。

要約

ビジネスモデルとは何か?

発想力は誰にでも高められる
ipopba/gettyimages

ある調査で「今後6カ月以内に、自分が住む地域に起業に有利なチャンスが訪れると思いますか?」という質問をいろいろな国の人におこなった。すると、アメリカと中国では「はい」と答えた人が30%を超えた一方で、日本人はわずか8%ほどにとどまった。

その背景として、日本においては、「起業したいけれども、ビジネスアイディアが思いつかない」という人が少なくないことが挙げられるだろう。その理由のひとつは日本の教育にあるのではないだろうか。日本人は、積極的にアイディアを出す訓練をほとんど受けずに育つ。「聞く姿勢を養う」「空気を読む」などに重きが置かれ、創造性やイノベーション意識を高める土壌がない。

しかしながら、アイディア発想は技術であり、後天的に習得できるものだ。逆上がりのように、コツを覚えれば誰でもできるようになる。

電球を発明したのは誰?

突然だが、電球を発明したのは誰か知っているだろうか。トーマス・エジソンが頭に浮かんだ人も多いはずだ。だが実は、電球を「発明」したのはジョゼフ・スワンという人物だ。

多くの人は、エジソンが電球を発明したと勘違いしている。それはおそらく、電球をはじめて電灯として「商用化」したのがエジソンだからだ。エジソンは電球の技術を使って、電灯の開発を試みた人物である。

電球だけがあっても、暗闇を灯すことはできない。発電機を開発して、送電システムを整える必要がある。さらには、電流の流れを一定に保つ定電流発電機や、ソケット、スイッチ、ヒューズ、メーターなども必要だ。エジソンはこれらの送電システムを整備し、ひとつのビジネスモデルを築き上げた。電球というひとつのモノを使って事業化し、社会全体の仕組みを構築したのだ。

ビジネスモデルの定義

ビジネスモデルの定義にはいろいろあるが、そのなかでも本質をついているのが、「ビジネスモデル・キャンバス」を提唱したアレックス・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール氏による次の定義だ。

「ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し顧客に届けるかを論理的に記述したもの」

「どのように価値を創造し顧客に届けるか」の論理と構造を自覚することには、さまざまなメリットがある。ビジネスモデルを適切に分析して設計できる、投資家やパートナーに説明して必要な経営資源を集めやすくなる、成長をめざすときに現状を動かしている基本的な論理をもとに考えられる、何らかの不具合が起きたとき健全な状態に戻すことができる、などだ。

【必読ポイント!】 ビジネスモデルを考える

要素に注目する
MissTuni/gettyimages

ビジネスモデルを考える方法は大きく2つある。「要素に注目するアプローチ」と「関係に注目するアプローチ」だ。

「要素に注目するアプローチ」の場合、まずは事業コンセプトを策定する。これは、「誰に、どんな価値を、どのように提供するのか」を簡潔にまとめたものだ。事業コンセプトというフレームワークを使うことで、ビジネス構造をシンプルに表現できる。

一方で、シンプルゆえに、正しい言葉を使わないと他者にうまく伝わらない。要素が3つしかないため、漏れが生じやすいのもこのフレームワークの弱点だ。

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要約公開日 2020.09.04
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