ある調査で「今後6カ月以内に、自分が住む地域に起業に有利なチャンスが訪れると思いますか?」という質問をいろいろな国の人におこなった。すると、アメリカと中国では「はい」と答えた人が30%を超えた一方で、日本人はわずか8%ほどにとどまった。
その背景として、日本においては、「起業したいけれども、ビジネスアイディアが思いつかない」という人が少なくないことが挙げられるだろう。その理由のひとつは日本の教育にあるのではないだろうか。日本人は、積極的にアイディアを出す訓練をほとんど受けずに育つ。「聞く姿勢を養う」「空気を読む」などに重きが置かれ、創造性やイノベーション意識を高める土壌がない。
しかしながら、アイディア発想は技術であり、後天的に習得できるものだ。逆上がりのように、コツを覚えれば誰でもできるようになる。
突然だが、電球を発明したのは誰か知っているだろうか。トーマス・エジソンが頭に浮かんだ人も多いはずだ。だが実は、電球を「発明」したのはジョゼフ・スワンという人物だ。
多くの人は、エジソンが電球を発明したと勘違いしている。それはおそらく、電球をはじめて電灯として「商用化」したのがエジソンだからだ。エジソンは電球の技術を使って、電灯の開発を試みた人物である。
電球だけがあっても、暗闇を灯すことはできない。発電機を開発して、送電システムを整える必要がある。さらには、電流の流れを一定に保つ定電流発電機や、ソケット、スイッチ、ヒューズ、メーターなども必要だ。エジソンはこれらの送電システムを整備し、ひとつのビジネスモデルを築き上げた。電球というひとつのモノを使って事業化し、社会全体の仕組みを構築したのだ。
ビジネスモデルの定義にはいろいろあるが、そのなかでも本質をついているのが、「ビジネスモデル・キャンバス」を提唱したアレックス・オスターワルダー氏とイヴ・ピニュール氏による次の定義だ。
「ビジネスモデルとは、どのように価値を創造し顧客に届けるかを論理的に記述したもの」
「どのように価値を創造し顧客に届けるか」の論理と構造を自覚することには、さまざまなメリットがある。ビジネスモデルを適切に分析して設計できる、投資家やパートナーに説明して必要な経営資源を集めやすくなる、成長をめざすときに現状を動かしている基本的な論理をもとに考えられる、何らかの不具合が起きたとき健全な状態に戻すことができる、などだ。
ビジネスモデルを考える方法は大きく2つある。「要素に注目するアプローチ」と「関係に注目するアプローチ」だ。
「要素に注目するアプローチ」の場合、まずは事業コンセプトを策定する。これは、「誰に、どんな価値を、どのように提供するのか」を簡潔にまとめたものだ。事業コンセプトというフレームワークを使うことで、ビジネス構造をシンプルに表現できる。
一方で、シンプルゆえに、正しい言葉を使わないと他者にうまく伝わらない。要素が3つしかないため、漏れが生じやすいのもこのフレームワークの弱点だ。
3,400冊以上の要約が楽しめる