インターネットの本質は、情報や物を小分けにして、離れていたものをつなげることにある。それにより、これまでなかった情報の流れ、物の流れが起こり、そこに新たなビジネスが生まれる。
たとえば、これまでなら口紅を買えば使い切るのが普通だった。しかし今では、口をつけたところだけカッターで切り落とし、残った部分をメルカリで売ることも可能である。4000円で口紅を買った人が、自分が使った部分だけ切り落として、3500円でメルカリに出品したとする。次の人もまた使った部分だけ切り落として3200円で出品。これを繰り返せば、結果として1人が負担する料金はたった数百円となる。メルカリの実態は「シェアリングエコノミー」と変わらなくなっているのだ。
このように、情報や物を小分けにしてつなげるのがインターネットの本質といえる。では「何」を小分けにしてつなげるのか。そして「誰」と「誰」をつなげるのか。著者は、それらをネットビジネスの進化の系統樹という形で、14のパターンに分類している。ネットビジネスの原理・原則まで掘り下げれば、この先ネットビジネスがどこに向かうのか、グローバル企業がめざすものを先回りすることも不可能ではない。
本書のPart1では、ネットビジネスのどこに権力が宿るかについて解説されている。Part2以降では、どうすれば権力が独占構造をつくれるかという原理を、ネットビジネスの進化の枝分かれに沿って語っていく。本要約では、Part1~5のうち、それぞれ1つずつ「進化のパターン」をとりあげる。
ネットビジネスにおける権力の宿る場所とは何か。消費者側の一等地は「ポータル」だ。
インターネット上には大量の情報があり、ほしい情報にたどり着くための「入り口」のニーズが高まっていった。そんななか、1995年3月にはアメリカでヤフーが、1998年9月にはグーグルが生まれた。ヤフーとグーグルの間では、権力の一等地となる「検索」を巡る熾烈な争いが巻き起こることとなる。
当初ヤフーは、ユーザーの役に立つハイパーリンクを集めた「お役立ちリンク集」を作ることで、ユーザーを獲得した。ウェブサイトにはURLという「住所」があり、それをつなぐのがハイパーリンクである。クリックするとそのサイトに一瞬で飛べるのはハイパーリンクでつながっているからだ。
ユーザーにとっては、入り口は1つでよい。ヤフーというポータルサイト以外に、2番手、3番手を覚える必要はない。こうして「ポータルサイトと言えばヤフー」という純粋想起を獲得し、一気に市場を占有できたのだ。しかし落とし穴があった。ネット上の情報が爆発的に増え、人力でウェブサイトを集めていては追いつかなくなったのだ。
一方、後発のグーグルは、ネット上にあるサイトの「ページ」を巡回し収集する技術を開発した。この検索エンジンによって、ヤフーのようなサイト単位のリンクではなく各サイト内のページを検索結果に表示できるようになった。
目的のページに直接飛べる検索エンジンの便利さを知った人々は、何度もクリックしなければ目的のページに行けないヤフーには戻れなくなった。グーグル検索の精度向上に伴い、グーグルはヤフーにかわる「インターネットの入り口」になった。一方でヤフーは、いまもトップの集客力を誇るポータルサイトとして君臨し続けている。「Yahoo! ニュース」「Yahoo! 天気」などのさまざまなサービスを提供することで、ネットのポータルから、ネットとリアルのサービスのポータルとしての「スーパーアプリ」へと進化しようとしているのだ。
インターネットの最大の特徴は、網の目のように張り巡らされたハイパーリンクだ。ハイパーリンクは、情報を求める人と必要な情報をつなぎ、ネットに接続したい「人と人」「企業と企業」「企業と人」をつなぐ。物やサービスを売りたい人と買いたい人をつなぐオンラインサービス全般を、「eコマース(電子商取引)」と呼ぶ。
eコマースの分野でも、人が最初にアクセスする「入り口」になることが重要となる。そのため、「入り口」を巡る熾烈な競争が展開されてきた。
BtoCコマースの覇者といえるアマゾンの最初の事業領域は「本」だった。本を選んだのは、ユーザーにとっての購入の判断しやすさ、在庫管理・配送のしやすさにくわえ、多品種少量生産という性質があったからだ。
現在、日本だけで毎年7万点もの書籍が出版されている。それらすべてを書店に並べるのは不可能だ。そこで、書店に置いていないニッチな本とその本がほしい人とをつなげ、物流改革により本の到着を速めた。こうしたことがアマゾンの強みとなり、その認知が広がっていった。
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