経営戦略4.0図鑑
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経営戦略4.0図鑑
出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2020年04月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

そもそもタイトルにある「戦略4.0」とは何を指しているのだろうか。著者は「はじめに」で、世界の最前線を走るトップ企業たちが採っている戦略をそう名付けると宣言している。つまり、特定の戦略の型をいうのではなく、「最新の」といった意味合いで使われている。マーケティングに詳しい方であれば、すぐさまフィリップ・コトラーの「マーケティング4.0」を思い浮かべることだろう。著者自身も、それに対応していると解説している。

本書は3つのパートから構成されている。パート1で紹介されるのは、戦略4.0を読み解く3つの視点だ。パート2では、戦略そのものについて考察している。そしてパート3では、現代ビジネスのキープレーヤー15社について、それぞれの戦略に具体的に切り込んでいる。このパート3こそ本書の本編というべき部分であり、1と2はそれを読み解くための基礎知識編と考えることもできるだろう。

本要約ではそのパート3を、プレーヤー2社の戦略を対比することでまとめたが、実際のところはデジタル化によって競争と共創の関係は入り乱れている。そのあたりのダイナミズムは、ぜひ本書にあたってみてほしい。

現在のビジネスの最前線で起きていること、そして「NEXT(次の一手)」について、これだけ多角的、俯瞰的に眺められる本書は貴重である。読者は、全体像をざっくり頭に入れて、各自のビジネスや関心に関わるところからさらに深く掘り進んでいくといいだろう。

ライター画像
しいたに

著者

田中道昭(たなか みちあき)
競争戦略アナリスト。「大学教授×上場企業取締役×経営コンサルタント」立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略及びミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任し、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。メディア・広告、小売り、流通、製造業、サービス業、医療・介護、金融、証券、保険、テクノロジーなど多業種に対するコンサルティング経験をもとに、TV・新聞・雑誌等各種メディアでも活動。ニッセイ基礎研究所客員研究員、公正取引委員会独占禁止懇話会メンバー等も兼務。テレビ東京WBSコメンテーター。
おもな著書に『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』『ソフトバンクで占う2025年の世界』(以上、PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』(日経BP社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    企業分析においては、複数の企業の売上高営業利益率と総資産回転率をまとめて表示した「ROA(総資産利益率)マップ」が有効だ。ROAマップでGAFA、BATH、日本企業、米国企業の15社を比較すると、日本企業は収益、資産効率ともに低調であることがわかる。
  • 要点
    2
    アリババとアマゾンの次なる一手は、オンラインとオフラインを融合させた「OMO(Online Mergers with Offline)」だ。オンラインでの購買データを蓄積し、マーケティングに生かしている。

要約

パート1:いま、世界の「最前線」ではなにが起きているのか?

「戦略4.0」を読み解く3つの視点

本書では、戦略4.0を読み解くための3つの視点として「キープレーヤー」「ビジネスモデル」「テクノロジー」が挙げられている。

「キープレーヤー」としては世界の最前線に立つ「GAFA」「BATH」が、「ビジネスモデル」としては「プラットフォーム」「エコシステム」「経済圏」「サブスクリプション化」の4つが紹介される。そして「テクノロジー」としては、IoT、AI、クラウド、5Gが挙げられている。

ここでは、「ビジネスモデル」のなかから、プラットフォーム、エコシステム、経済圏の3つを取り上げる。

プラットフォーム
marchmeena29/gettyimages

プラットフォームとは、ユーザーと制作者が取引する共通の場のことをいう。「土台」や「基盤」を意味するこの言葉がビジネス用語として明確に使われるようになったのは、アップルのiPhone登場以降だ。

iPhoneが生まれるまで、端末を製造するメーカーは、自社の製品を販売した時点でしか利益を得られなかった。ところがアップルは、このビジネスモデルを一変させたのだ。

そのカギとなったのが、App Storeだ。アップルがApp Storeというプラットフォームをつくったことで、App Storeは端末ユーザーと「アプリを開発し、販売する開発者」が取引する“場”として機能することとなった。その結果、アップルは、端末の売上だけでなく、端末の販売後も利益を得られるようになったのだ。このプラットフォームは、「多種多様な開発者の参加を促し、ユニークなアプリが次々に開発されていき、それがユーザーのダウンロードにつながる」という好循環を生んだ。

エコシステム

プラットフォームには、音楽やゲームの制作者、端末制作者、アクセサリーなどの制作者といった関係者が参加し、相互作用しながら、協調関係を構築してきた。こうして形成されたのが「エコシステム」だ。動植物がお互いを必要としながら生存を維持するのと同じように、「相互依存的な協調関係」が構築されているビジネスは、相乗効果を発揮しながら拡大していく。

エコシステムは、プラットフォームを土台として形成されていく。プラットフォームが順調に稼働すれば、好循環を生むエコシステムが生まれる。エコシステムとプラットフォームは切っても切れない関係にあるのだ。

プラットフォーム型ビジネスを成功させ、エコシステムを形成するには、良質な参加者をより多く獲得し、参加者同士の相互作用を促すことによって、協調関係を構築することがポイントとなる。

経済圏

経済圏とは、現在、「アマゾン経済圏」や「アリババ経済圏」のように、企業名をつけて用いられることが多い言葉だ。このような使われ方をした場合、経済圏という言葉は「その企業の事業の影響を強く受ける範囲」と理解するのが妥当だろう。「経済圏」はエコシステムの発展形だが、ユーザーがその経済圏に価値や魅力を感じ、自発的、積極的に参加している点がポイントだ。

代表的な例として、楽天経済圏が挙げられる。楽天経済圏には、楽天市場を筆頭に、旅行や、銀行、証券、フリーマーケットなど多彩な業種がラインナップされている。ユーザーにとっては、手続きの簡便さやポイントの獲得など、この経済圏内で行動することのメリットは大きい。こうした仕組みによって楽天とユーザーの協調関係が出来上がり、経済圏が拡大していく。

パート2:「戦略」の全体構造を理解する

創発的戦略
画像提供/ SB クリエイティブ

本書では、戦略4.0を読み解くために、「戦略」についても解説されている。著者によると、「戦略の全体構造」は三角形で、下から「マーケティング戦術:4P、4C」、「マーケティング戦略:STP分析」、「経営戦略:全社戦略、事業戦略、機能戦略」、「ビジョン」「ミッション」となっており、三角形の土台には「バリュー」がある。要約ではそのうち「経営戦略」「ミッション」「ビジョン」を紹介する。

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要約公開日 2020.08.28
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