本書では、戦略4.0を読み解くための3つの視点として「キープレーヤー」「ビジネスモデル」「テクノロジー」が挙げられている。
「キープレーヤー」としては世界の最前線に立つ「GAFA」「BATH」が、「ビジネスモデル」としては「プラットフォーム」「エコシステム」「経済圏」「サブスクリプション化」の4つが紹介される。そして「テクノロジー」としては、IoT、AI、クラウド、5Gが挙げられている。
ここでは、「ビジネスモデル」のなかから、プラットフォーム、エコシステム、経済圏の3つを取り上げる。
プラットフォームとは、ユーザーと制作者が取引する共通の場のことをいう。「土台」や「基盤」を意味するこの言葉がビジネス用語として明確に使われるようになったのは、アップルのiPhone登場以降だ。
iPhoneが生まれるまで、端末を製造するメーカーは、自社の製品を販売した時点でしか利益を得られなかった。ところがアップルは、このビジネスモデルを一変させたのだ。
そのカギとなったのが、App Storeだ。アップルがApp Storeというプラットフォームをつくったことで、App Storeは端末ユーザーと「アプリを開発し、販売する開発者」が取引する“場”として機能することとなった。その結果、アップルは、端末の売上だけでなく、端末の販売後も利益を得られるようになったのだ。このプラットフォームは、「多種多様な開発者の参加を促し、ユニークなアプリが次々に開発されていき、それがユーザーのダウンロードにつながる」という好循環を生んだ。
プラットフォームには、音楽やゲームの制作者、端末制作者、アクセサリーなどの制作者といった関係者が参加し、相互作用しながら、協調関係を構築してきた。こうして形成されたのが「エコシステム」だ。動植物がお互いを必要としながら生存を維持するのと同じように、「相互依存的な協調関係」が構築されているビジネスは、相乗効果を発揮しながら拡大していく。
エコシステムは、プラットフォームを土台として形成されていく。プラットフォームが順調に稼働すれば、好循環を生むエコシステムが生まれる。エコシステムとプラットフォームは切っても切れない関係にあるのだ。
プラットフォーム型ビジネスを成功させ、エコシステムを形成するには、良質な参加者をより多く獲得し、参加者同士の相互作用を促すことによって、協調関係を構築することがポイントとなる。
経済圏とは、現在、「アマゾン経済圏」や「アリババ経済圏」のように、企業名をつけて用いられることが多い言葉だ。このような使われ方をした場合、経済圏という言葉は「その企業の事業の影響を強く受ける範囲」と理解するのが妥当だろう。「経済圏」はエコシステムの発展形だが、ユーザーがその経済圏に価値や魅力を感じ、自発的、積極的に参加している点がポイントだ。
代表的な例として、楽天経済圏が挙げられる。楽天経済圏には、楽天市場を筆頭に、旅行や、銀行、証券、フリーマーケットなど多彩な業種がラインナップされている。ユーザーにとっては、手続きの簡便さやポイントの獲得など、この経済圏内で行動することのメリットは大きい。こうした仕組みによって楽天とユーザーの協調関係が出来上がり、経済圏が拡大していく。
本書では、戦略4.0を読み解くために、「戦略」についても解説されている。著者によると、「戦略の全体構造」は三角形で、下から「マーケティング戦術:4P、4C」、「マーケティング戦略:STP分析」、「経営戦略:全社戦略、事業戦略、機能戦略」、「ビジョン」「ミッション」となっており、三角形の土台には「バリュー」がある。要約ではそのうち「経営戦略」「ミッション」「ビジョン」を紹介する。
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