中小・ベンチャー企業

CFOの教科書

未読
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CFOの教科書
出版社
中央経済社

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出版日
2020年05月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

CEO、COO、CFOとは企業幹部によくある役職だが、それぞれどのような業務を担っているのか、正確に把握しているだろうか。CFOに関しては、財務関係の業務を担う人とざっくり理解している人も多いかもしれない。そんな人は、本書を読んで驚くことだろう。

著者は読者であるCFOに対して、財務管理のスペシャリストの枠をこえた「攻めのCFO」になることを提案する。「カネ」の管理に留まらず、企業の業務全体を把握し、最適な在り方を客観的に俯瞰するポジションだ。具体的には、「理念策定」「戦略立案」「組織運営」などにも取り組む、企業の重要なパートナーとしての在り方である。

とはいえ、多くのCFOにとって、理念策定や組織運営は専門外ではないだろうか。だからこそ、本書を教科書としてほしい。それまでCEOやCOOの仕事だと思われていた範囲も含めて、企業経営に欠かせない実務が丁寧に、詳細に解説されているからだ。企業経営をしていく上で陥りがちな失敗例もストーリー形式で挙げられているので、どんな人にも読みやすく、役立つ内容となっている。

本書を読めば、これまで財務管理のみに従事してきた社外CFOであっても、クライアント企業に対して新たな価値を提案できるようになるはずだ。新たな仕事の可能性を模索したい社外CFOにとっては、今すぐ使えるノウハウが満載の一冊だといえるだろう。企業経営の教科書として、多くのビジネスパーソンに手に取っていただければと思う。

ライター画像
池田明季哉

著者

高森厚太郎(たかもり こうたろう)
一般社団法人日本パートナーCFO協会代表理事
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画制作、動画配信、音楽出版)、Ed‐Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。
現在は数字とロジックで経営と現場をExitへナビゲートするベンチャーパートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングの傍ら、デジタルハリウッド大学大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務め、事業や個人のプロデュースに注力している。
中小企業診断士、事業再生士(CTP)、一級知的財産管理技能士(コンテンツ専門業務)

本書の要点

  • 要点
    1
    企業の経営は、理念を掲げるCEO、実際の業務をオペレーションするCOO、そして事業全体を客観的に俯瞰するCFOの三権分立状態が望ましい。どれか一つに力が集中しないよう気配りが必要である。
  • 要点
    2
    中小ベンチャーのCFOの業務としては、全体管理、PL/CF改善、組織マネジメント、事業再生・承継、資金調達、採用、新規事業、Exitが挙げられる。
  • 要点
    3
    PL/CF改善は、CFOの主要業務の一つだ。社外CFOとしても、クライアントから相談を受けやすく、バリューを出しやすい分野である。

要約

中小ベンチャーの経営

経営者にしかできない4つの仕事
taa22/gettyimages

中小ベンチャー企業において、経営者にしかできない仕事は4つある。「経営理念の作成・浸透」「実務のPDCAサイクルを回す」「リソースの調達・配分」「エグゼクティブへの渉外活動」だ。事業規模が大きくなってスタッフが増えても、この4つだけは他の人に任せられない。

経営理念とは、「なにを目指して企業を成長させていくのか」のことで、ビジョンとミッション、そしてウェイという要素がある。経営理念が組織内に浸透していないと、企業の成長が阻害される恐れがある。だからこそ経営者は、強いリーダーシップを持って経営理念の作成、浸透に取り組まなければならない。

策定した経営理念を現実化するにあたっては、煩雑な実務の全容を把握し、回し、監督しながら企業を成長させていく。計画を立て(Plan)、組織を使ってそれを実行に移し(Do)、実行後にその過程や結果を確認して(Check)、必要に応じて改善を行って次の計画に生かす(Action)というサイクルだ。

企業が成長するにつれ、「ヒト」「カネ」「モノ」などといったリソースが必要になってくる。大企業であればリソースの調達は各専門部署がやってくれるが、中小ベンチャーではそうはいかない。基本的には経営者がリソースの調達を行うとともに、その配分の最適化も経営者の仕事となる。

渉外活動としては、接待が挙げられる。接待は「遊び」に見えるかもしれないが、思わぬビジネスチャンスが見つかったり、有益な情報交換ができたりすることもある。企業を拡大・成長させるには、経営者が自ら外に出て動くことが必要なのだ。

CEO、COO、CFOの三権分立

会社が成長するにつれ、経営者一人では立ち行かなくなってくると、経営の役割分担を行うことになる。一般的なのはCEO、COO、CFOの3人体制だ。

CEOには、創業者が就くケースが多い。経営理念の作成、とりわけミッションの作成は創業者にしかできないからだ。CEOは自分の会社を信じ、ミッションの達成に向けて突き進むだけでなく、周りを巻き込み、ついてこさせるエネルギーを持つ人物だ。企業の顔であり、渉外活動を通じてビジネスチャンスを広げる役割も担う。

COOは「オペレーションを率いる番頭」だ。ミッションを実務に落とし込み、業務のPDCAを回していく。CEOが理想を描き、COOが現実を見るといってもいいだろう。

CFOは「経営管理担当の参謀」として、事業を客観的に俯瞰する。「カネ」だけでなく「ヒト」「モノ」を含めたリソースの調達と配分を行い、全体的な戦略を整えていくのが仕事だ。

重要なのは、CEO、COO、CFOの三権分立状態が確立され、相互に牽制し合っていることだ。誰か一人の独裁状態に陥ることがないよう、勢力が拮抗している状態が理想的である。

【必読ポイント!】 CFOの仕事

全体管理
oatawa/gettyimages

本書では、中小ベンチャーのCFOの業務として、全体管理、PL/CF改善、組織マネジメント、事業再生・承継、資金調達、採用、新規事業、Exitが挙げられている。本要約ではそのうち、いくつかを取り上げて解説する。

全体管理とは、企業の全体を経営管理する業務のことだ。

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要約公開日 2020.08.07
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