中小ベンチャー企業において、経営者にしかできない仕事は4つある。「経営理念の作成・浸透」「実務のPDCAサイクルを回す」「リソースの調達・配分」「エグゼクティブへの渉外活動」だ。事業規模が大きくなってスタッフが増えても、この4つだけは他の人に任せられない。
経営理念とは、「なにを目指して企業を成長させていくのか」のことで、ビジョンとミッション、そしてウェイという要素がある。経営理念が組織内に浸透していないと、企業の成長が阻害される恐れがある。だからこそ経営者は、強いリーダーシップを持って経営理念の作成、浸透に取り組まなければならない。
策定した経営理念を現実化するにあたっては、煩雑な実務の全容を把握し、回し、監督しながら企業を成長させていく。計画を立て(Plan)、組織を使ってそれを実行に移し(Do)、実行後にその過程や結果を確認して(Check)、必要に応じて改善を行って次の計画に生かす(Action)というサイクルだ。
企業が成長するにつれ、「ヒト」「カネ」「モノ」などといったリソースが必要になってくる。大企業であればリソースの調達は各専門部署がやってくれるが、中小ベンチャーではそうはいかない。基本的には経営者がリソースの調達を行うとともに、その配分の最適化も経営者の仕事となる。
渉外活動としては、接待が挙げられる。接待は「遊び」に見えるかもしれないが、思わぬビジネスチャンスが見つかったり、有益な情報交換ができたりすることもある。企業を拡大・成長させるには、経営者が自ら外に出て動くことが必要なのだ。
会社が成長するにつれ、経営者一人では立ち行かなくなってくると、経営の役割分担を行うことになる。一般的なのはCEO、COO、CFOの3人体制だ。
CEOには、創業者が就くケースが多い。経営理念の作成、とりわけミッションの作成は創業者にしかできないからだ。CEOは自分の会社を信じ、ミッションの達成に向けて突き進むだけでなく、周りを巻き込み、ついてこさせるエネルギーを持つ人物だ。企業の顔であり、渉外活動を通じてビジネスチャンスを広げる役割も担う。
COOは「オペレーションを率いる番頭」だ。ミッションを実務に落とし込み、業務のPDCAを回していく。CEOが理想を描き、COOが現実を見るといってもいいだろう。
CFOは「経営管理担当の参謀」として、事業を客観的に俯瞰する。「カネ」だけでなく「ヒト」「モノ」を含めたリソースの調達と配分を行い、全体的な戦略を整えていくのが仕事だ。
重要なのは、CEO、COO、CFOの三権分立状態が確立され、相互に牽制し合っていることだ。誰か一人の独裁状態に陥ることがないよう、勢力が拮抗している状態が理想的である。
本書では、中小ベンチャーのCFOの業務として、全体管理、PL/CF改善、組織マネジメント、事業再生・承継、資金調達、採用、新規事業、Exitが挙げられている。本要約ではそのうち、いくつかを取り上げて解説する。
全体管理とは、企業の全体を経営管理する業務のことだ。
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