まず、福岡の強さを見ていただこう。人口増加率は7%と日本一だ。その内訳を見ると、移住などの社会増と、出産による自然増がともに増えているのが特徴である。市民アンケート(2019年)では「福岡市が好き」は96.6%、「住みやすい」は95.4%にものぼる。開業率は7.5%と21大都市中1位だ。税収は3000億円を超えており、全国の政令指定都市で唯一、6年連続過去最高を更新中である。
このように、日本で最も勢いのある都市、それが福岡だ。野村総合研究所が発表した「成長可能性都市ランキング」(2017年)のポテンシャルランキングでは1位に、イギリスのグローバル情報誌で発表された「世界で最も住みやすい都市ランキング」(2016年)では第7位に選ばれた。1位は東京都で、ベルリン、ウィーン、コペンハーゲンと続き、7位に福岡市がつけている。まさに「最強の地方都市」だといえるだろう。
もともと福岡はネガティブ要素が多いまちだった。一級河川がないため工業都市にはなれない、土地が狭い、都市機能が密集しすぎていて都市開発が進まない。都市と空港が近いため、高層ビルを建てることができず、築50年以上の古いビルも残っていた。
そんなまちを変えた要素の一つに、福岡都市圏や産官学民の連携が挙げられる。プラットフォームとしての役割を担っているのは、2011年に福岡市の高島市長を中心に、財界、学会等が連携して設立された「福岡地域戦略推進協議会(以下、FDC)」だ。FDCが産官学民に点在している力を連携させることで、まちの成長を加速させている。
FDCは、首都圏や海外との連携も考え、成長戦略の策定から推進までを一貫して行う組織だ。福岡都市圏を核として、九州、さらに隣接するアジア地域との連携を図り、事業性のあるプロジェクトを推進している。
2019年11月末時点で、FDCには207の会員企業や大学自治体などが所属し、その半分以上は福岡都市圏外から参画している。域内外の企業がコラボレーションすれば、産業創出やオープンイノベーションの機会が増えるし、新たな視点が得られる。
著者が日本の地方に出向くと、「まちの魅力を見つけようにも、何もないんです」と言われることがある。しかし、本当に何もないのだろうか。福岡では、何もないと思われていた場所に価値を見出し、それを愛する人が集まり、やがて大きなムーブメントに成長していった事例が多くある。
今や福岡都市圏で屈指の人気エリアとなった「糸島」もその一つだ。糸島はもともと、自然しかない田舎だと思われていた。だが、まちを愛するあるサーファーが小さなカフェを開いたことから、感度の高い人が集い始め、音楽フェスが生まれ、多くの人が移住する憧れの地となった。糸島は、「自然しかない田舎」から「自然があるおしゃれな場所」へと変貌を遂げたのだ。やがて、関東圏からの移住先としても注目されるようになり、地元の情報誌が調査した「住みたい街ランキング」では、福岡の都心部を抑えて1位に選ばれている。
福岡にはMICE(マイス)が多いことも見逃せない。
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