2019年、天皇が生前退位されたことで、国内外問わず天皇制への関心が高まった。アメリカのCNNや『New York Times』などが新天皇の即位を大々的に報じたことからも、関心の高まりが感じられる。
著者はしばしば、海外の有識者から、天皇についての質問を受ける。日本の皇室が長きにわたって継続していることと、太古の昔を除き、天皇制自体を廃止しようとする政治的抗争がほとんどなかったことが特別視されているようだ。
天皇制がいつから存在しているのかは、明確には分かっていない。だが、現在の天皇家は、6世紀初頭に即位した継体天皇から続く家系だと考えられている。そのため、日本の天皇家は少なくとも1500年は同じ家系で承継されているといってよい。これは、世界中の皇室・王室の中でも最長である。
日本では、皇位を退いた上皇が権力を持つ時代があった。これは世界的に見ても極めてまれである。海外では、退位した皇帝などが力を持って二重権力にならないよう、退位後に幽閉される場合もあるくらいだ。
日本における初の武家政権は、鎌倉幕府だ。これ以降、天皇家の政治的権力は弱まり、江戸幕府の第15代将軍・徳川慶喜による大政奉還まで、武家が権力を握り続けた。そして、大政奉還、王政復古の大号令による明治維新以降、天皇を中心とする政治体制が復活した。
このように日本には、天皇家が政治的権力を有した時代も、そうでない時代もあった。それでも常に天皇としての地位は守り続けてきたことが特徴だ。
海外の人に天皇制を説明する際には、2つのポイントを押さえておきたい。
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