創業家一族

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出版社
エムディエヌコーポレーション

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出版日
2020年02月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

米国でGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が、中国ではBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が大きく成長するなか、平成の日本ではそれに匹敵するIT企業が現れなかった。本書は今の日本を代表する企業の創業者・創業家44家を解剖し、100年に1度の変革期に活かそうというものだ。

ファーストリテイリングを率いる柳井正は、広島の小さなアパレル店を日本第1位、世界第3位のアパレルメーカーへと成長させた。しかし後を継ぐ人材がいない。32期連続で最高益を更新しているニトリは、終身現役を宣言する流通の革命児、似鳥昭雄が築いた。「創業者に二代目は必要ない」と宣言しているが、今後の動向に注目が集まる。創業家への大政奉還が成ったトヨタは、現社長の章男とその息子大輔にいまの大変革期を生き抜く覚悟があるかを問われている。要約ではほかに、スズキ、パナソニック、カシオ計算機、吉本興業、セブン&アイ・ホールディングス、ソニーをピックアップした。

本書で取り上げている44の対象は、全てが日本を代表する企業だ。その興隆には数々のエピソードがあり、多くのイノベーションを発見できる。分厚い本ではあるが、飽きさせないドラマとヒントが豊富なので、ぜひ全てを読んでほしい。会社やチームを率いる経営者やリーダー、起業をめざすアントレプレナーやイントレプレナーにはもちろんのこと、就活前の学生や転職を考える若手ビジネスマンにもお勧めの1冊だ。

著者

有森隆(ありもり たかし)
経済ジャーナリスト。早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は『企業舎弟闇の抗争』(講談社+α文庫)、『日銀エリートの「挫折と転落」-木村剛「天、我に味方せず」』(講談社)、『実録アングラマネー』(講談社+α新書)、『経営者を格付けする』(草思社)、『ネットバブル』『日本企業モラルハザード史』(以上、文春新書)、『住友銀行暗黒史』『日産 独裁経営と権力抗争の末路』(以上、さくら舎)、『強欲起業家』『デフレ経営者』(以上、静山社文庫)、『異端社長の流儀』(大和文庫)、『プロ経営者』(千倉書房)など多数。『住友銀行イトマン 権力者の背任』(ネスコ・文春)は別名義。

本書の要点

  • 要点
    1
    平成の日本はイノベーションが起きなかったが、かつての日本には起業家精神溢れる創業者がおり、今の日本を代表する企業を作り上げた。
  • 要点
    2
    トヨタやソニーなど、日本を代表する企業の創業家44家を解剖、解説し、100年に1度の変革期に活かそうとする内容だ。
  • 要点
    3
    大成功を収めても後継者がいない、あるいは君臨し続ける。創業家としての今後の手腕を問われる。一方、創業家からの脱却に苦心している企業もある。

要約

二代目には継がせない

なぜ創業家なのか?

平成を一言でいうと、画期的なイノベーションが起きない時代だった。米国ではGAFA、中国ではBATが台頭したが、日本には匹敵するIT企業は誕生しなかった。しかし、かつて日本には新たな分野を開拓する力を持つ、起業家精神あふれる創業者がいた。本書はその足跡をたどり、創業家一族を解剖、解説し、100年に1度と言われる産業構造の転換に向けて活かそうというものだ。対象の44家として、トヨタやソニーなど日本を代表する企業から産業界に名前を残す創業者、既に支配が終わった創業家などを丁寧にフォローしている。

異端児でカリスマ・柳井正
JaysonPhotography/gettyimages

ユニクロの柳井正は根っからの異端児だ。山口県宇部市で土建業を営む裕福な家庭の長男として育ち、早稲田大学を卒業後、ジャスコ(現イオン)に入社するも9カ月で退職。宇部に戻り、父親が経営する小郡商事に入社した。普段着のカジュアルウェアを安価で提供するため、広島市に「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」をオープンする。ユニクロはこの時の店名の略だ。

香港で品質の良いポロシャツを提供していたジョルダーノの創業者、ジミー・ライと1996年に出会い、委託生産と自店販売の小売業であるSPAの日本展開を決意した。その後「早い小売業」を意味するファーストリテイリングを社名とし、1999年2月に東証一部へスピード上場する。

国内のアパレルでは独り勝ち、世界でも第三位となったが、柳井がめざすのは世界一のアパレル企業だ。2017年、柳井は情報を商品化する情報製造小売業をめざすと宣言する。使いこなせていなかった顧客情報を活用し、消費者が欲しい商品を選んでから工場を動かすというものだ。

大成功を収めた柳井だが、後継者がいない。息子二人を社内取締役につけつつ、柳井は血の継承より会社の成長を最大の価値としている。社内の若手抜擢の情報もあるが、柳井に代わる異能が社内にはいない。「引退しない」という終身宣言さえしている。

終身現役の革命児・似鳥昭雄
Kamonchai Mattakulphon/gettyimages

ニトリHDは32期連続で最高益を更新している。飽和した家具・インテリア市場で、SPAのノウハウを使い成功した。

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要約公開日 2020.08.25
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