創業者の髙田明氏が去って5年。それでもジャパネットが成長を続け、過去最高の売上高を更新できるのはなぜか。
引退時に最も危惧されていたのはテレビ通販番組のMCの部分だった。これを表面的に真似しても意味はない。だから、あれほどまでにお客様の心をつかんだ先代社長の姿勢の本質をつかまなくてはならない。
自社の強みと本質を考え続けてわかったのは、ジャパネットは3つのステップを愚直に続けてきたことである。すなわち、①見つけて、②磨いて、③伝える、の3つだ。この3ステップにきちんと取り組みさえすれば、どんな商品も大抵は売れるとも言える。だから、これからのジャパネットにおいても、この3ステップをひたすら極めていこうと心に決めた。もう少し詳しく説明しよう。
「見つける」段階では、競争力のある商品に絞って展開する「厳選集中」がジャパネットの特徴だ。最も良いものを社内で徹底的に議論し、総合力で最も優れた商品を選んで全力で販売する。次の「磨く」段階では、メーカーに要望を出すことまでして良い商品をさらに改善する。分割金利手数料や設置サービスを負担する取り組みなどもその1つだ。そして、「伝える」段階では、消費者に知ってもらいたいこと、伝えるべきこと、商品の魅力を最大限届ける。
これまでは「見つける」「伝える」活動が概ね9割を占め、「磨く」ことが相対的に少なかったこともわかった。そこで、この部分を特に強化するために、修理などのアフターサービス専門会社や、設置・配送専門の会社をつくった。自社で魅力的な商品、サービスをきめ細かくつくり上げることも、「磨く」活動の地道な取り組みである。
「伝える」ためのジャパネットのテレビ通販番組は、日中の時間帯はほぼ生放送で、台本もない。ライブにこだわるのは、リアルのほうが伝わるものが多いからだ。時にミスがあっても、リアルにこだわったほうが想いが伝わると考えている。
通販番組に限らずリアルにこだわることを大切にしており、社長も役員も挨拶をする時に原稿は用意しない。社員旅行などでの役員挨拶は抽選制にしていて、その場で発言者が決まる。緊張感を大事にしているからだ。緊張感は「いい挨拶」につながる。
「この場所で今、誰に何を伝えるべきか」を常に考えることが、自分自身の成長につながる。他の人の挨拶を聞くときでも、「自分なら何を話そう」と考えるようにしてきた。
「磨く」活動の1つとして、ジャパネットは通信販売を始めた頃からアフターサービスに取り組んできた。まずは商品購入後の問い合わせに対応することからスタートし、その後専門部署を設置する。コールセンターのオペレーターは、商品を手元に用意して実際に操作しながらお客様からの質問に答えてきた。修理についてもかねてより「自社でやるべきだ」と考えており、社長を引き継ぐのとほぼ同時に、修理の内製化を含めたアフターサービス専門の会社を設立した。
ここまでやる理由は2つある。1つは、ジャパネットは「お客様が衝動買いする会社」だということ。なんとなく番組を見ていてほしくなった、というお客様が後悔しないよう、アフターサービスまで責任を負うことが大切なのだ。もう1つは、メーカー経由ではなかなか入ってこないお客様の声が直接聞けること。メーカーと共同で企画・開発するジャパネットオリジナルモデルにお客様の生の声を反映させることで、より良い商品を届けられるようになる。
これらは、「髙田明さんが薦めるから買う」ではなく、「ジャパネットだから買う」に変えていくための努力でもある。
社長に就任した2015年から働き方改革に取り組んでいる。その目的は、従業員の満足度向上や採用のためだけではなく、みんながムダなく、気持ち良く、短い時間で仕事をする、いわば「楽をして成果を上げる」ことだ。本質的には「考え方改革」であるとも言える。
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