アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行

「デジタル通貨」の次なる覇者
未読
アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行
アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行
「デジタル通貨」の次なる覇者
未読
アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行
出版社
出版日
2020年06月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

クレジットカードやデビットカード、電子マネーなどを利用する機会もかなり増えた。以前と比べて現金を使うシーンは激減しているので、デジタル通貨と言われてもピンとこなかったのが正直なところだ。デジタル通貨が生まれても、それほど変わりはないのだろう、と。しかし、その認識はどうやら間違っていたようだ。

ビットコインから始まった仮想通貨は、投資商品として人気を博し、その後の大暴落を経て、アルトコインやステーブルコインなどへと多様化してきた。そこにきて世界中の金融当局を騒然とさせたのが、フェイスブックが提唱したリブラ計画だ。リブラは中央銀行のビジネスモデルを参考にし、現行通貨制度の破壊者となる可能性を秘めていた。リブラの危険性に気付いた金融当局は一斉に懸念を示し、これに対抗している。

一方、仮想通貨は価格変動が激しいビットコインから、価格が安定したデジタル通貨へと進化しようとしている。各国の中央銀行はデジタル通貨には懐疑的だったが、近年その姿勢を急変させている。その理由は、リブラなどの民間企業に通貨の発行主権を奪われることへの危機感だけではない。本書をお読みいただければ、それがよくわかるだろう。

この本は、ビットコインからデジタル通貨へとつながっていく世界的潮流をわかりやすく説明してくれる良書だ。お金は日々の生活と密接に関わっている。つまり、本書は「すべての消費者」に関係するものである。

著者

中島真志(なかじま まさし)
1958年生まれ。81年一橋大学法学部卒業。同年日本銀行入行。金融研究所、国際局、国際決済銀行(BIS)などを経て、麗澤大学経済学部教授。早稲田大学非常勤講師。博士(経済学)。単著に『アフター・ビットコイン 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』、『外為決済とCLS銀行』、『SWIFTのすべて』、『入門 企業金融論』、共著に『決済システムのすべて』など。決済分野を代表する有識者として、金融庁や全銀ネットの審議会等にも数多く参加。

本書の要点

  • 要点
    1
    リブラは中央銀行のビジネスモデルを学んでおり、通貨に近いとても良く出来た仕組みだ。そこを金融当局に見破られ、集中砲火を浴びることになった。
  • 要点
    2
    仮想通貨はビットコインの高騰暴落を経て、アルトコイン、ステーブルコインへと多様化した。次なるステップはデジタル通貨である。
  • 要点
    3
    中央銀行デジタル通貨(CBCD)は各国で研究、実証実験が進んでおり、ここ数年で中国など複数の国で運用が始まる。10年後には日本でも生活の中で普通にデジタル通貨を使用しているだろう。

要約

リブラショックの真実

世界が揺れたリブラ計画
Ivan-balvan/gettyimages

2019年6月18日、「リブラ入門」というホワイトペーパーが公表された。リブラ協会の発行だったが実態は、世界中に膨大なユーザーを持つGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の一角のフェイスブックによる、世界中で使えるグローバルなデジタル通貨「リブラ」発行の表明であった。国家が持つ通貨主権に基づいて中央銀行が独占的に発行してきた通貨に対し、金融機関ですらない一民間企業が挑戦してきた形だ。

国家の権限を奪われると考えた各国の金融当局や米議会は、過敏な反応を示した。2019年10月に開催されたG20では、デジタル通貨のリスクに対する強い懸念が記された合意文書がまとめられ、当面は発行を認めない方針が確認された。同月に米下院で開催された公聴会にはフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏が呼ばれ、米当局の承認がなければリブラは発行しない、という言質を取られた。

各国の金融当局がリブラを敵対視する理由の1つに、「通貨」として非常によくできているリブラの仕組みがある。リブラは短期間に広く普及する可能性があり、既存の法定通貨や中央銀行の位置づけを低下させるのではないか。つまり、リブラが現行通貨制度のディスラプターとなる可能性を見出したのだ。

ビットコインと何が違うのか?

リブラとは何かを考えるためには、ビットコインと比較するのがわかりやすい。両者は、仮想通貨であること、ブロックチェーンを利用していること、など共通点が多い。

しかし、両者にはそれ以上に相違点もある。まず、中央管理者の有無。ビットコインは問題が発生しても解決すべき中央管理者はいなかったが、リブラはジュネーブに設立された「リブラ協会」が運営管理を行ない、問題発生時の解決責任も持つ。

次に、発行主体の有無。ビットコインは無から有を生み出す仕組みで発行主体がなく、誰の負債にもならない形で発行される。リブラはリブラ協会が発行主体となり、リブラ協会の負債として発行される。したがって、法定通貨への交換に対する義務も持つ。

そして、裏付け資産の有無。ビットコインは基準となる目安が存在せず、価格の乱高下が生じた。リブラは銀行預金と短期国債で運用される「リブラ・リザーブ」という100%の裏付け資産を持つため、これに対応する形で価格が安定すると目されている。

またリブラは、クローズド型のブロックチェーン技術を用いて信頼できる参加者のみのネットワークに限定するなど、技術面でもビットコインとの違いがある。これにより、信頼性が高く、高速な処理が可能となっている。

リブラの目的

リブラのミッションは、貧困などにより金融サービスから取り残された人びとにアクセスを提供する「金融包摂」、ひいては「弱者救済」だが、それはフェイクだ。

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要約公開日 2020.08.24
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