いま第三次AIブームが到来している。しかも今回のブームは、過去2回のものとは大きく異なる。というのもコンピューターの飛躍的な能力向上に伴い、世界中でAIシフトが進行しているからだ。AIシフトにより、国境も産業も分野も関係なく、世界の勢力図は塗り替わった。主要プレイヤーは、アメリカのITビック5(アップル・グーグル・アマゾン・フェイスブック・マイクロソフト)、中国のBAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)だ。
中国の急激な台頭の背景には、基礎研究への注力と、データベース利用のハードルの低さ、AI開発に必要なデータ収集の容易さがある。たとえば中国のあるシステム・インテグレーション会社は、全国民の半数の健康保険データを所有している。日本の民間企業では有り得ないことだ。
日本の多くの企業は、世界のAIシフトに伴うデジタル・ディスラプションに直面しており、このままではAI産業の小作人に成り下がる。早くAIシフトを加速させなければならない。
AIを進化させたキーテクノロジーは、ディープラーニングだ。ディープラーニングは画像認識精度を大きく向上させ、情報のインプットがそのままアウトプットにつながるようになった。自動車走行中データのインプットが自動運転というアウトプットになり、身体のスキャン画像や健康情報のインプットが医療というアウトプットになり、株式情報や経済統計のインプットが高収益運用というアウトプットになる、という具合に。
AIには得意領域と不得意領域がある。得意領域は、情報や音声・画像などの「識別」、数値やニーズなどの「予測」、作業自動化や行動最適化などの「実行」の3つだ。逆に苦手領域としては、ゴール設定、察知力、問いを立てること、ひらめき、リーダーシップなどが挙げられる。こうしたAIの苦手領域は、人にとっての得意領域でもある。AIを人が補い、人をAIが補うことが、今後重要なポイントになる。
日本企業は、AI分野ですでに出遅れている。AI産業の小作人にならないためにも、日本が競争力を持つ分野、すなわち自動車、機械、産業用ロボット、アニメ、ゲームなどで、AI化を進めていかなければならない。人の仕事がAIに奪われることを懸念する向きもあるが、アメリカの先端企業と同じように、これからの人はAIを使って仕事をすればいいだけだ。
AI活用は中小企業こそチャレンジすべきである。この領域は先行する大企業も少なく、中小企業にも事業拡大のチャンスがある。事業部単位でも、AI活用は考えられる。製造と広告、CRM(顧客関係管理)など、幅広い領域でAI活用を検討していくべきだろう。政府、企業、個人、それぞれのレイヤーでAIシフトを加速しなければ、日本は世界から取り残される。AIはすでに身近な場所にある。ぜひ経験し活用していくことだ。
トヨタは、AIを活用した自動運転技術の開発に取り組んでいる。その目的は「安全」だ。すべての運転シーンで最適な安全支援をするため、レアケースも含めて研究している。
アクセルの踏み間違いへの取り組みもその一例だ。以前はブザーで知らせていたが、事故をより防ぐために、車を停止する自動ブレーキシステムを開発した。どの国も衝突安全基準が決まっているが、基準はアップデートされるため、常に高い基準を設定して研究開発を行なっている。
自動運転技術の開発には、3つの知能化が必要である。
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