業界破壊企業

第二のGAFAを狙う革新者たち
未読
業界破壊企業
業界破壊企業
第二のGAFAを狙う革新者たち
著者
未読
業界破壊企業
著者
出版社
出版日
2020年05月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

独自のアイデアやテクノロジーで業界の勢力図を一変させているイノベーション企業。このような新興企業やプレイヤーのことを「ディスラプター」と呼ぶようになって久しい。読者の皆さんは、そんなディスラプターのことをどれくらいご存じだろうか。

アメリカのニュース専用放送局CNBCでは、業界のディスラプターを毎年50社選出し、発表している。自身もシリアルアントレプレナーの著者がスポットライトを当てるのは、最近の「ディスラプター50」から選りすぐりの約20社だ。ビジネスの着眼点や創業者の思い、業界独自のバックグラウンドや企業成長ストーリーが、著者の鋭い分析とともに紹介されている。「世界の多種多様なイノベーション企業を一気に知りたい」という人に、まさにぴったりの本だ。要約ではその一部を紹介するので、それぞれのディスラプターからインスピレーションを得ていただきたい。

本書の後半では、ディスラプターに共通する特徴が鮮やかに浮かび上がり、基本的なビジネスモデルや「どんな考えや理論をもとにビジネスを展開しているのか」というカラクリが見えてくる。

これから事業をおこしたいと思っている人、イノベーションの種を探す経営幹部の方々には特におすすめしたい一冊だ。カタログ的にディスラプターのアイデアやビジネスモデルを楽しみながら、その本質をつかみ、イノベーティブな発想の源泉にふれていただければと願う。

著者

斉藤徹(さいとう とおる)
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役。1961年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部を経て、1985年、日本IBM株式会社入社。1991年、株式会社フレックスファームを創業。2005年、株式会社ループス・コミュニケーションズを創業。学習院大学経済学部特別客員教授を経て、2020年、ビジネス・ブレークスルー大学教授に就任。専門分野はイノベーションと組織論。

本書の要点

  • 要点
    1
    破壊的イノベーションは価値創造タイプと価格破壊タイプの2タイプに分類できる。また、プラットフォーム型、ビジネスモデル型、テクノロジー型の3つの型にも分類でき、こうしたタイプと型の分類によって、スタートアップのトレンドを俯瞰的に理解することができる。
  • 要点
    2
    ディスラプターに共通する特徴は次の3つだ。ミレニアル世代が主役となっていること。サステナブルという価値基準を持っていること。そして、リーンスタートアップというリスクの低い成長手法を取っていることである。

要約

イノベーションが私たちの「業界」を破壊する

破壊的イノベーションのタイプと型
gremlin/gettyimages

ディスラプターの事例を紹介する前に、まずはイノベーションについて考察する。『イノベーションのジレンマ』の著者クレイトン・クリステンセン氏は、イノベーションには2つの種類があるとした。

1つ目は持続的イノベーション。既存の顧客満足のために、現製品サービスを改善するというものだ。

2つ目は破壊的イノベーションである。新しい技術やアイデアで、現業界の構造を破壊するというものだ。

さらにクリステンセン氏は、破壊的イノベーションをさらに2種類に区別した。そのイノベーションが「新しい市場に、新しい価値を提供しているもの(新市場型)」なのか「既存の市場でコストダウンを実現しているもの(ローエンド型)」なのかである。

著者はこれをもとに「価値創造タイプ(新市場型・破壊的イノベーション)」と、「価格破壊タイプ(ローエンド型・破壊的イノベーション)」という2つの視点で、世の中のイノベーションを整理していく。

価値創造タイプの好例はソニーのウォークマンだ。「外で、気軽に、歩きながら音楽を聴く」という新しい価値の提供に成功した。一方、価格破壊タイプの好例といえばユニクロだ。びっくりするような安価で服が買えるという「アハ・モーメント(熱狂的なファンを生み出す驚きの瞬間)」の提供に成功している。

そして、著者はイノベーションのタイプに加え、もう1つ「何によってイノベーションを起こしているのか」という視点によって、次のような3つの型に分類する。

(1)プラットフォームで需要と供給をつなぐもの(プラットフォーム型)

(2)ビジネスモデルで常識を超えた顧客体験を生むもの(ビジネスモデル型)

(3)模倣しにくい独自の技術を強みにするもの(テクノロジー型)

こうしたタイプと型の分類によって、最新のスタートアップのトレンドを俯瞰的に理解することができる。次からはプラットフォーム型、ビジネスモデル型、テクノロジー型というそれぞれの型に当てはまる企業の一部を紹介する。

プラットフォームによる業界破壊企業

SoFi(ソフィ)
RomoloTavani/gettyimages

サービス:P2Pレンディングによる学生ローン

事業の着眼点:先輩が後輩にお金を貸すしくみを作る。

SoFiの事業は名門大学の学生に、その大学のOBが融資をするという価値破壊型のサービスである。貸し手と借り手を直接繋げることで、従来の銀行ローンに比べ、低金利を実現している。

P2Pレンディングというサービス形態はそれほど目新しいものではない。それでも事業が成功している要因として、次の2つが考えられる。

1つは、「借り手と貸し手のマッチング」の工夫だ。ターゲットを「今はまだお金を持っていないけれど、将来的に稼ぐだろうと思われる高学歴な学生」に絞っているのが斬新といえる。金融の原則から見ても、名門大学の学生は高収入の職業に就き、返済する可能性が高い。よってターゲットとして理にかなっているわけだ。

もう1つの成功要因は、事業に「母校の後輩を支援する」というストーリーを乗せている点である。アメリカでは、自分が卒業した大学に「恩返しする」「寄付をする」ことは自然な行為だ。そのため、比較的低金利で融資を集めることに成功した。こうしてこのモデルはその後も展開し、数十校へと広がっている。

Opendoor(オープンドア)

サービス:不動産のオンライン買取販売

事業の着眼点:不動産をオンラインで買い取る。30日以内なら返金可。

Opendoorは、不動産業界にもテクノロジーの波が押し寄せていることを実感させるような、価値創造型のサービスである。特筆すべき点は、業界でいち早く「iBuyer」を取り入れたことだ。iBuyerとは、価格査定アルゴリズムを活用して売り手から直接物件を買い取り、その後転売するビジネスモデルのことだ。従来のプロセスでは査定・内見・交渉など、まどろっこしい手順を踏む。そのため一般的に売却まで2カ月~半年かかっていた。しかし、iBuyerを活用すれば、査定開始から数日後には買取価格が売り主に提示される。「早く現金化したい」という人にとっては非常にありがたいサービスだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2913/4631文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2020.10.09
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
シュンペーター経済発展の理論(初版)
シュンペーター経済発展の理論(初版)
J・A・シュンペーター(著)八木紀一郎(訳)荒木詳二(訳)
未読
トレイルブレイザー
トレイルブレイザー
渡部典子(訳)マーク・ベニオフモニカ・ラングレー
未読
Spotify
Spotify
池上明子(訳)スベン・カールソンヨーナス・レイヨンフーフブッド
未読
つなぐ時計
つなぐ時計
金田信一郎
未読
起業家の勇気
起業家の勇気
児玉博
未読
危険人物をリーダーに選ばないためにできること
危険人物をリーダーに選ばないためにできること
ビル・エディ宮崎朔(訳)
未読
日本型組織 存続の条件
日本型組織 存続の条件
山本七平
未読
AIゲームチェンジャー
AIゲームチェンジャー
市嶋洋平江藤哲郎
未読