ハリウッドの敏腕プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン。「人を出世させる力」を持つワインスタインは、グウィネス・パルトロー、マット・デイモンなど数々の若手俳優をスターダムに押し上げ、『セックスと嘘とビデオテープ』『クライング・ゲーム』ほか多くの独立系映画を大ヒットさせてきた。アカデミー賞をはじめ数えきれないほどの賞も獲得している。ハリウッドにおいて、「ハーヴェイ」の名は権力と同義語であった。
しかし、その裏でワインスタインは「女性への扱いがひどい」と囁かれていた。2016年、女優のローズ・マッゴーワンは匿名のプロデューサーにレイプされたと訴えていたが、噂ではワインスタインのことだと言われていた。彼女は「ハリウッドやマスコミの間では公然の秘密」と、#WhyWomenDontReport(どうして女性たちは声を上げないのか)というハッシュタグを追加してツイッターに投稿した。
同年5月、「ニューヨーク・タイムズ」紙(以下、「タイムズ」)の記者ジョディ・カーターは、ワインスタインの調査をするためマッゴーワンに連絡を取った。マッゴーワンはオフレコ(非公開前提)を条件に、彼女が受けた恐ろしい体験を打ち明けた。
1997年、マッゴーワンは注目すべき新人女優の1人としてサンダンス映画祭に参加していた。独立系映画の一大発信地だったこの映画祭で、ワインスタインは「統治者」として君臨していた。ワインスタインは「話し合いをしよう」と言って彼女を自分の宿泊するホテルへ誘った。彼の部屋でひとしきり映画の話をして帰ろうとした瞬間、マッゴーワンは浴槽のある部屋に引きずり込まれた。ワインスタインは彼女を裸にし、股のあいだに自分の顔を強引に押しつけた。
数日後、彼女の自宅の電話に、「ほかの大女優たちはぼくの“特別な友だち”で、その仲間にきみも入れるよ」という、身の毛がよだつ内容の伝言が入った。
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