マインドフルネスとは、「今、この瞬間」に集中している状態を意味する。またこれは、善悪の判断を下さずに、自身の思考・感情・周囲の状況をあるがままに観察して、気づきの力を発揮し続ける技術でもある。
では、マインドフルネスを実践するとどんな影響があるのだろうか。これに関しては、fMRI(磁気共鳴機能画像法)を用いて活動中の脳をモニターすることで、科学的に検証されている。ハーバード大学の研究によると、1日30分程度のマインドフルネス瞑想を8週間行うことで、次のようなことが明らかになったという。
1つ目は、「海馬」の厚みが増加することである。海馬は慢性的なストレスによって萎縮する。よって、その厚みが増加することは、脳機能的にストレス耐性が向上したことを意味する。
2つ目は、怒りや不安といった情動を司る「扁桃体」の反応が緩やかになることである。つまり、感情のコントロールができ、セルフ・マネジメント能力が高まっていくのだ。
また、他の研究によると、集中力を向ける対象を意図的に決定する「前帯状皮質」が活性化することがわかっている。前帯状皮質は自己抑制や学習をもとにした最適な意思決定を司る部位である。つまり、マインドフルネスを実践することで、注意散漫になりにくくなり、意思決定の質が上がっていく。
このように、マインドフルネスに科学的な裏づけがあるからこそ、グーグルのような世界をリードする企業がマインドフルネスによる研修を導入しているのだ。
ではマインドフルネスを組織に導入すると、具体的にどのような変化があるのだろうか。この変化は大きく4つの段階に分けられる。
第1段階は、個人の人材力の向上である。マインドフルネスの基礎となる瞑想で、注意力と集中力を強化すると、仕事中に注意をそれたことに気づけるようになる。さらには、それた注意を仕事に戻すことができるため、作業効率が上がるのだ。
また「今、この瞬間」に集中することで、過去への後悔や未来への不安といったネガティブな感情にとらわれることが減り、落ち着いた心でいられる。
リーダーにとって最も重要な能力は、自己認識力(セルフアウェアネス)といわれている。自己認識力とは、自分の感情・身体・資質・好き嫌い・長所・短所・直観を知る能力である。
自己認識力を鍛えることで、「自分が何に対してワクワクするのか」、「自分がどう生きたいのか」という内発的動機が明らかになる。これらを自覚すると、職場で自分なりに楽しんで働く方法を模索できるようになっていく。そうした姿が周囲の人をひきつけ、「個人のリーダーシップの向上」につながる。これが第2段階にあたる。
人は無意識的に周囲の人に、ネガティブな評価・批評・判断をしてしまう。こうした行いは、他者をあるがままに受け入れることを妨げ、相手との良質な関係性やコミュニケーションを阻害することになる。しかも、他者への批評や判断は、勝手な思い込みや固定観念に起因していることが多い。
そのため、他者との関係性をよくするには、他者に無意識に行っていた批評・批判・評価・判断に気づくことが重要となる。マインドフルネスを実践し、自分自身に対する気づきの力(自己認識力)が向上していくと、自分の内部で起こっている批判・評価に気づき、共感が生まれやすくなる。これが他者理解を深め、第3段階にあたる「関係性の向上」につながっていく。
生産性が高いチームに共通点があるとすれば、それは何だろうか。2012年〜2014年にかけてグーグルが行った研究で明らかになったのは、その共通点が「チームの中に、心の安全性がある」ということだ。
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