ニトリは1967年、30坪の家具屋1店舗から始まった。その5年後の米国視察が、創業者である似鳥昭雄とニトリという会社の運命を大きく変えることになる。
米国の家具店は、人生観を覆すほどの衝撃であった。店内のトータルコーディネート、日本と比べて半額程度の価格設定の背景には、顧客の暮らしを便利に、豊かにしたいという顧客目線があった。どれをとっても日本より50年は進んでいる。日本人の暮らしを米国並みに豊かにすることに生涯を懸けようと誓った。
その誓いは、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というロマン=ニトリの企業理念となっている。それは会社の存在意義であり、ニトリの社員の躍進の原動力でもある。
ロマンは、世のため人のために役に立とうという「志」と、自分自身でやり遂げる「覚悟」があって初めて成り立つ。他人任せの状態では成し遂げられない。
「世界中の人々の暮らしを豊かにする」という人生の目的を得て、物事の見方、考え方、働き方は180度変わった。ただ利益を追求するという自己中心的な視点から、人々の幸せにつながる努力に変化したのだ。一生をかけるに値するロマンを抱き、それに向けて仕事をしていると実感できたとき、仕事はやりがいではなく「生きがい」になる。
大きなロマンを実現に近づけるためには、目標となる数字と達成までの期限を含めたビジョンが必要となる。ただし、簡単に手が届く目標はビジョンとは呼ばない。長期で一見達成不可能なほど大きいもの、基本は“100倍発想”で考えるものだ。今の立ち位置から5年程度の将来では、見える景色はあまり変わらない。だから、30年後を見据えて今の100倍の目標を立てるのだ。
ビジョン達成のための壁は常識の呪縛である。今まで歩いていたものをロケットに乗り換えるような異次元の発想の転換がなければ、企業は成長しない。また、一人ひとりがリスクを恐れずやり遂げる覚悟を持つことも大切だ。常識を超えた挑戦から生まれる成功と失敗は、自分自身にハイスピードで大きな成長をもたらすことになる。
企業も個人も、常に成長、進化し続けなければならない。過去も現在も目標に向かう通過点にすぎないと考え、過去の成功や現状を徹底的に否定することで大きく成長することができる。
しかし、好調なときほど人は安定志向となり、問題発見や解決より現状肯定を選んでしまう。好調の裏に重大な問題が隠れていても、目をつむってしまうのだ。そうなると油断と怠け心が芽生え、人と企業の成長も停止する。1つの事業で急成長した企業が、一挙に衰退し始めるのはそのせいだ。
ニトリが行う「現状否定」とは、現在の方法に固執せず、より良い方向を模索し、未来に向かっていくことだ。より良い品質とより低い価格をめざしてヒット商品をも変えていく。その結果、さらに価値のある商品が生み出せる。
ビジョンの達成に特別な方法はない。その日に行うべき業務について、「観察・分析・判断」への意識を継続的に徹底することが大切だ。
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