自分の人生をアートとして見れば、アーティストがアートを創り出すように、自分の人生を創り出せるようになる。人生を構築するプロセスに対してもっと主体的に関われるようになり、人生経験の質も向上し、世界は一変する。「こんな人生にしたい」と思うことを、画家が絵画を描き出すように生み出して実行し、実際に生きることは可能なのだ。
人生が作品であるなら、あなた自身がその作者になれる。ところが残念なことに、私たちがアート作品の創造プロセスの基礎を学ぶことは少ない。そのすぐれたやり方をマスターし、人生を構築する基本習慣にするための方法を学ぶことが、本書のテーマである。
人生をアートとして創り出すために、あなたの道具箱に入れておくべき原理原則、実践方法がある。それは、創造プロセスの「手順」、クリエイターの「姿勢」、人生創造のディレクションに火を灯す「精神」だ。これらは創造プロセスにおいて、切り離すことができないものである。
創造プロセスの手順は、デザインと実行のふたつから成る。設計図なしに家を建てるのは難しい。長期的な目標のためには、とりわけ実行しやすい戦略が重要になる。簡単なステップからはじめ、次第に複雑で困難なことに進むとよい。
また、行動することではじめて現実がわかるし、間違いがあれば訂正できるので、行動することも重要だ。私たちは「状況にうまく対応するのが大事だ」と教えられているが、状況は出発点に過ぎない。本当に大切な姿勢は、自分がどんな人生を選択するかである。精神は、創造プロセスの最も深い源泉への扉を開くものである。人生をアートにしたいなら、自分自身の深いところにある生命力の源泉を無視してはならない。
創造プロセスで最も重要な力学のひとつが「緊張」である。これはストレスやプレッシャーのことではなく、ひとつの構造の中でふたつの要素が織りなすコントラストのことだ。緊張はかならず、ふたつの要素に差があって合致しない状態から、差が解消されて合致した状態へ向けた変化をもたらす。創造プロセスの初期段階では、創り出したい成果のビジョンと、その成果から見たいまの現実のあいだにコントラストが存在する。しかし創造プロセスの最後にはビジョンと現実が合致して、コントラストは消え、緊張が解消されることになる。アートにおいて、緊張は創作を前進させる最も強力なパワーであり、緊張が生み出されるとき、クリエイターは構造を創り出している。
人生をアートとして創り出すときに大切なことのひとつは、創造をサポートする構造を創り出すことだ。構造とは、複数の部分が相互に結びつき影響し合う単一の全体構造のことである。構造の中には、創造プロセスに向いたものもあれば、振り子が揺り戻すように元に戻ってしまうものもある。重要なのは、成功が逆戻りしない構造を打ち立てることだ。
人生をアートとして創り出すときの緊張は、構造的な緊張である。緊張構造を確立するために求められるのは、目標・成果・目的などのビジョンを定義して描くこと、いまの現実を観察して客観視することである。緊張構造を取り入れると、ちょうどいいチャンスが訪れたり、情報が飛び込んできたり、ぴったりな人物に出会ったりと、幸運な偶然が日常的に起きるようになる。
大切なのは、特別な出来事を美化することではない。平凡なことも幸運なことも同じように、すべてを自分の人生を創り出すために使うということだ。
インスピレーションが訪れるのは、わずかな瞬間だけだ。「創造プロセスはインスピレーションに頼るものではない」ということを、クリエイターはよく知っている。
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