睡眠不足は、体に悪い。多くの人が知っていることだ。では、睡眠不足にはどのような弊害があるのだろうか。
まず、病気のリスクが高まり寿命が縮むことが挙げられる。睡眠時間が6時間以下の人は、そうでない人に比べ、がんが6倍、心筋梗塞や糖尿病が3倍、うつ病が5.8倍、自殺率が4.3倍にもなる。睡眠不足は、生活習慣病やメンタル疾患のリスクと直結しているのだ。
睡眠時間を削ると、「命の回数券」と呼ばれる「テロメア」が短くなる。染色体の末端にあるテロメアは、細胞分裂するほど短くなっていく。テロメアがなくなると細胞分裂ができなくなることから、早死にのリスクが高まる。
ノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン博士らの研究によると、睡眠5~6時間の高齢者のテロメアは短く、睡眠7時間の高齢者は一般的な中年のテロメアと同程度かむしろ長いことがわかっている。テロメアは寿命と深い関係があるので、「睡眠不足は寿命を縮めるということになる。
睡眠不足は仕事のパフォーマンスの低下にもつながる。6時間睡眠を14日間続けると、48時間眠らずにいるときと同じくらい、集中力や注意力、判断力、記憶力などが下がってしまう。毎日6時間しか眠っていない人は、徹夜明けで仕事をしていたり、お酒を飲みながら仕事をしていたりするのと同じことだ。
睡眠時間は何時間がベストなのか。答えは「質の良い睡眠を7時間以上」である。個人差はあるものの、さまざまなデータから判断すると、必要な睡眠時間は「7時間以上」。健康を維持しつつ、仕事で高いパフォーマンスを出したいなら、7時間以上眠るようにしよう。
カリフォルニア大学の研究によると、平均睡眠時間が7時間(6時間半〜7時間半)の人が、最も死亡率が低いことがわかっている。それ以上でもそれ以下でも、死亡率は高くなる。7時間睡眠が最も健康によいのである。
睡眠環境の改善には、「生活習慣の改善」と「昼はバリバリ活動し、夜はリラックスする」の2つが有効だ。「生活習慣の改善」とは、「睡眠に悪い生活習慣」をやめ、「睡眠にいい生活習慣」を取り入れることである。
「悪い習慣」の代表格は、スマホやパソコン、テレビから発生するブルーライトや強い光だ。ブルーライトとは、波長が380〜580ナノメートルの青色の光のことで、昼間の光と同じ波長である。日没後にブルーライトを浴びると、脳が昼間と勘違いして覚醒した状態となり、メラトニンの分泌が抑制され、寝付きが悪くなってしまう。「寝る前2時間は、スマホを見ない」がベストだが、難しければ、寝る前の30分はスマホチェックを最小限に抑えるなどの工夫をしよう。
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