いつもなんとなく社員がイライラしている。上司は人前で部下を怒鳴りつけ、みんながビクビク仕事をしている。こうした職場はまさに「不機嫌な職場」だ。
Google社が2012年から4年かけて取り組んだ大規模な労働改革のすえにたどり着いた、有名な成果報告がある。「生産性を上げ、チームとして成功するためには、心理的安全性が欠かせない」ことを突き止めたものだ。
心理的安全性とは、一人ひとりが安心して、自分らしく働けること。すなわち「自己認識・自己開示・自己表現ができること」、安心してなんでも言い合える職場ということである。人の顔色ばかり窺ってしまうような職場ではその実現は難しいだろう。
だからこそ、怒りとうまく付き合うための「アンガーマネジメント」に全チームで取り組む必要性がある。とくに気をつけたいのが、上司の在り方である。上に立つ者が自分の怒りをマネジメントできないと、怒りはどんどん下へと伝播していく。それでは「不機嫌な職場」は改善しない。
いま、大企業を中心とした多くの組織が、2020年6月に施行されたパワハラ防止法の対策に取り組んでいる。パワハラ防止策をとることが義務づけられているため、管理職にアンガーマネジメントに取り組ませる動きが勢いづいているものの、パワハラの線引きは多くの人にとって悩みの種だろう。
「働き方改革」や「ダイバーシティー&インクルージョン」という言葉に代表されるように、価値観が多様化していることを肌に感じる。また、自分にとっての「常識」は、相手にとっても「常識」になるとは限らない。
マネジメント層にとって大事なのは、部下のよきせぬ言動に直面しても自分の「当たり前」を押しつけない心構えだ。お互いの違いを認識した上で、「今後どうしていくのか」という未来に向けた対話を持つことが不可欠である。
「あの人のせいでイライラする」、「取引先が何かとわたしに要求してくるのでムカムカする」など、多くの人は外的要因に怒りの源があると思っている。
怒りは自分の中から生まれ出る感情だからこそ、コントロールできる。これをわかっていないと、アンガーマネジメントはできない。なぜなら外的要因のせいにすることは、「わたしの感情は誰かにコントロールされます」と宣言していることに等しいからだ。
怒りには、高いところから低いところへと流れる性質がある。上の立場に跳ね返すより、自分より力関係の弱い下の立場へと矛先を変えてぶつけてしまうからだ。家庭や学校でも同様だ。もし上司より部下のほうが知識や情報を持っていれば、上司が逆にパワーハラスメントを受けることもある。
怒りは身近な相手に対して強くなる傾向がある。
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