「コミュ障」という言葉がある。これは「コミュニケーション障害」の略称であり、今は一般的に「他人とコミュニケーションをとることが苦手であることを表す俗称」として使われている。
「コミュ障」という言葉が広く使われるようになったのは、「コミュニケーションは、本来できて当たり前のものだ」という考え方があるからだろう。だが実際には、コミュニケーションは練習が必要なものであり、「誰でもできて当たり前」ではない。だから、コミュニケーションが苦手な自分を責める必要はないし、苦手なら練習してうまくなればいい。
そこで必要なのが「武器」だ。コミュニケーションをとれる人たちは、経験を積み重ね、「武器」を獲得している。本書の目的は、コミュニケーションに使える「武器」を読者に渡すことだ。
仕事の会話はできても「どうでもいい話」や「ムダな雑談」が苦手だという悩みは多い。どうでもいい話をするときは、利害関係のない話題を選んでみよう。一番代表的なものが「天気の話」である。
ただし、「今日はいい天気ですね」というと「そうですね」で会話がストップしてしまうので、「今日、家を出るとき、晴れてました?」と質問形にするテクニックを使うといい。そうすれば、相手が自分のことを話してくれて、その人の住んでいる場所や家の様子などがわかり、そこから「どうでもいい雑談」が広がっていく。
会ったばかりの人にどうでもいい雑談を仕掛けていいものかと、迷ってしまう人もいるかもしれない。だが、重要な話や真剣に話し合いたいテーマに踏み込むのは、もっと親しくなってからにしよう。初対面の知らない人だからこそ、どうでもいい話をすべきなのだ。
どうでもいい話を始めにくい理由として、自分から話しかける以上は「オチ」をつけなくてはいけないと思ってしまっているからではないだろうか。だが、会話に「オチ」なんてなくていい。むしろ理想は、話し続けているうちに時間が来て、仕方なく終わるような会話だ。もう少し話していたい、また会いたいとお互いに思えたら最高である。
会話にオチが必要だと思ってしまうのは、会話を「自己表現」の場だと勘違いしてしまっているからだろう。しかし会話は、「自分が一方的に表現する」ものではない。自分が質問する→相手が考えて返してくれる→それをもとに自分がさらに考えて質問する、という繰り返しが基本だ。会話は、始めた時点ではどう転がるかわからず、また終わり方も予測できなくて当然である。すなわち、最初からオチを用意しているというのは、相手の自由な反応を認めていないようなものだ。
初めて会話する相手でほとんど事前情報がない場合は、「誰でも考えずに答えられることを聞く」テクニックが有効だ。例えば、
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