会計と経営戦略を結びつけるためには、決算書などで読み取った数値に対して、「WHY?」(なぜそうなったのか?)を問いかけ、「SO WHAT」(そこから何が言えるのか?)を追求する必要がある。そこで初めて「HOW」(どうすべきか?)というアクションに結びつけることができるのだ。
損益計算書(以下、PL)にふれる経験を積むことで、会計用語やその使い方も学んでいける。PLは1年間の「利益と損失の計算書」だ。これを読んでいくには「本業」「本業でない」という軸と、毎年行っている「経常的な活動」なのか今年限りの「特別な活動」なのかという軸を意識すると理解しやすい。実際のPLの記載順で考えると、一番上の「売上高」から始まり、「売上原価」と「販売管理費及び一般管理費(以下、販管費)」を引いた営業利益までが本業であり経常的な活動だ。これは会社にとってもっとも根幹である。その次に、「営業外収益」「営業外費用」という、本業ではないが経常的である活動が出てくる。ここまでで経常利益が算出される。
そして、今年限りの臨時的な「特別利益」「特別損失」も考慮して「税引前当期純利益」が算出される。そこから法人税等を引いたものが「当期純利益」だ。
日々の業務に伴って連続的に発生する1年間の損益データを記録するPLがビデオテープだとすると、貸借対照表(以下、BS)は、決算日の瞬間における企業の状態を撮影した写真だといえる。
BSは右側と左側に分かれており、その名の示す通り左右が対照(一致)している。右側には、どのようにお金を調達したのかの明細が記載される。そして左側には、調達したお金の投資、運用状態が写し出される。
BSは、次の3つの基本原則を守ると効率的かつ効果的に読めるようになるはずだ。
1つめは大局観を持つこと。全体像を先につかみ、森から林、そして木々から枝葉をみていくようにする。具体的にBSを見てみよう。左側全体は「総資産」で、「流動資産」と「固定資産」に区分けされている。1年超動かないものが後者だ。一方、右側の資金の調達先は「負債」と「純資産」に分かれる。細かな項目を見る前に、こうした大きな固まりで読むようにしたい。
2つめは優先順位をつけること。左上の現預金から順に眺めるのではなく、目的をもって数値を確認するのがよい。目的が明確でない場合は、企業の特徴が表れる大きな数値から読んでみよう。
3つめは仮説思考を貫くこと。ある企業の分析をしようとするなら、その企業や業界について一定の知識は持っているはずだ。見てから考えるのではなく、考えてから読むことが重要となる。
すなわち実際にBSを読むときには、まず仮説を立て、かたまりで読み、大きな数値から仮説を検証するように読み進めていく。
BSとPLの構造が理解できたら、実際の決算書を読み解いていこう。ここでは、トヨタ自動車を例に考えてみたい。まずは、トヨタの特徴から仮説を立ててみる。
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