マーケターのように生きろ

「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動
未読
マーケターのように生きろ
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「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動
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マーケターのように生きろ
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2021年03月04日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「個」の時代と言われて久しい。だが、「個と言われても自分に特別な個性はないし……」という人も多いのではないか。要約者もそのひとりだ。他人の目を引く個性はないと自覚しており、特別にやりたいこともない。本書は、そんな「個」の時代にどう生きていくべきか迷っていた要約者に、ヒントを与えてくれた。

著者である井上大輔氏は本書で、「マーケターとして生きる」ことを提案している。「マーケターとして生きる」とは、自分を表現するよりも「相手からスタートする」マーケター視点を持って生きることだ。相手が何を求めているかに思いをめぐらせ、それに応えるためにできうる限りのことをすればいい。そうして相手の期待に応え続けることで、強く求められる存在になれる。周りの人から求められる存在になることは、ひいては際立った「個」を確立することにつながる。

本書では、これまでユニリーバ、アウディ、ヤフーでマネージャーを歴任し、現在はソフトバンクの広告部門でマーケターを務める著者が、マーケター視点を持つための方法を指南してくれる。具体例や図が豊富に含まれており、マーケティングに親しみのない読者にとっても理解しやすいつくりになっている。

本書はマーケティングのコンセプトをキャリア・人生戦略に持ち込んだ点で異色だ。従来のキャリア本は基本的に「自分スタート」な本が多いだけに、それらとはまた違った視点でキャリアを考えられる良さがある。「個」の時代の振る舞いに悩んでいる人に一読をおすすめしたい。

著者

井上大輔(いのうえ だいすけ)
マーケター、ソフトバンク株式会社 コミュニケーション本部 メディア統括部長。
ミュージシャンを志すも挫折。小さな広告会社でプランナーの仕事を始める。当初はまったく仕事のできないお荷物社員だったが、マーケティングの英知から学んだ「仕事とは人の役に立つこと」という思想に目覚めて以降、仕事にかぎらずあらゆる場面で「必要とされる」ようになる。以降ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディジャパンなどでマネージャーを歴任。ヤフー株式会社MS統括本部マーケティング本部長を経て現職。
雑誌・Web媒体への寄稿や講演会・セミナーへの登壇多数。NewsPicksアカデミアプロフェッサー。著書に『デジタルマーケティングの実務ガイド』(宣伝会議)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    マーケティングの思想は、人生に応用できる。
  • 要点
    2
    仕事で思うような結果を出せていなかった著者は、マーケター思考を習得して以降、成果を上げられるようになった。またマーケター思考を仕事以外にも応用することで、人生が変わったと実感している。
  • 要点
    3
    マーケティングは、(1)市場を定義する、(2)価値を定義する、(3)価値をつくりだす、(4)価値を伝える、の4ステップに分かれる。この4ステップを習得し、自分の人生に役立てよう。

要約

マーケターのように生きろ

人の期待に応える
gorodenkoff/gettyimages

今や、際立った「個」がないと生き残れない時代だ。では、「個」がない人はどうすればいいのか。そんな人は「相手をよく知り、その期待に応える」生き方を選べばいい。相手を知り、相手が何を求めているかに思いをめぐらせて、全力で相手が求めていることに応えるのだ。本書ではそんな生き方を、相手ありきの活動であるマーケティングにたとえ、「マーケターのように生きる」と呼ぶ。

著者はソフトバンクの広告部門で働き、ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディ、ヤフーなどでマーケティングに携わってきた。講演や研修を依頼されることも多く、2019年は年間30回以上、人前で話している。「NewsPicksアカデミア」のプロフェッサーや業界イベントのボードメンバーも務めてきた。

実は、著者がこのように活躍できるようになったのは、自己主張や自我を抑え、「相手からスタートすること」を意識するようになってからのことだ。

マーケター視点は「人生すべて」に生かせる

著者は高校時代にギターに出会い、大学生になるとバンド活動に打ち込んだ。当時の著者にとって、音楽はあくまで「自分を表現する手段」であり、聴く人のことは何も考えていなかった。しかしそんな傍若無人が許されるはずはなく、バンドが日の目を見ることはなかった。

著者は音楽に未練を残しつつ、派手な感じがする広告の仕事を選んだ。この仕事でも「自分を表現したい」という意識は抜けていなかった。思うような結果を出せない日々が続く。

ターニングポイントとなったのは、所属していた外資系企業で、本社から来日する幹部の接待担当になったときのことだ。このとき、接待は英語で「エンターテインメント」と呼ぶと知り、はっとした。エンターテインメントとは、相手を接待することなのだ。スタート地点はあくまで相手である。相手をよく知り、相手の立場に立って、自分たちにできる精一杯のことをしなければならない。

「相手からスタートする」ことの重要性に気づいてからは、目に見えて企画の成功率が上がった。人前で話すときは、聞き手が求めているものを意識するようになった。すると講演や研修講師の依頼が舞い込んだ。文章を書く際に読み手の視点を意識するようにしたところ、ブログが注目され、本の出版まで実現した。

著者はこのように、「相手からスタートする」マーケター視点を仕事以外に広げることで、人から必要としてもらえるようになった。そうして人生そのものを変えることができたのだ。

マーケティングを通して、相手の視点に立って価値を定義し、それをつくりだし、伝え、交換してもらうことで、自分も相手も物理的に、精神的に豊かになる。この思想を「生きる知恵」として生かそうというのが、本書の提案だ。

【必読ポイント!】 仕事もキャリアも人生も好転する「マーケターのような生き方」4ステップ

STEP1:市場を定義する
Dilok Klaisataporn/gettyimages

本書ではマーケティングを以下の4つのステップに分けている。

(1)市場を定義する:「自分がもっと輝く場所」が見つかる

(2)価値を定義する:「相手が本当に欲するもの」がわかる

(3)価値をつくりだす:「自分がやるべきこと」がわかる

(4)価値を伝える:「自分を必要とする相手」に見つけてもらう

ステップ1の「市場を定義する」は、価値を提供する相手を決めることだ。誰を相手にすれば、自分を最大限に生かし、もっとも多くの人に自分を役立ててもらえるかを考える。ここで重要なのは、「自分ができること」と「相手にできる人の多さ」のバランスをとることだ。

副業でYouTuberとして活動するとしよう。「マーケターのように生きる」のであれば、

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要約公開日 2021.05.10
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