本書が扱う「勝てる」デザインとは、具体的には「クライアントが勝てる」「ライバルデザイナーに勝てる」「美大コンプレックスに勝てる」ことを対象とする。自分の心に打ち勝ち、デザインを通して周りの人を笑顔にするのが、勝てるデザインだ。
勝てるデザインをするためには、次の5つの点を満たすことが条件だ。まずは伝えたいことを一瞬で伝えられる「一撃でわかるデザイン」であること。次に、企画内容や世界観を大事にしてコンセプトと矛盾やズレがない「ポリシーがあるデザイン」であること。そして、他の何かにまるまる転用できないような「ならではのデザイン」であること。さらに、見る人の「興味を奪うデザイン」であること。最後に、飾りたくなるような「捨てられないデザイン」であることだ。
「勝てるデザイン」は、企画をすることで人を喜ばせ、人の心を動かすものだ。良いデザイナーであるためには、デザインだけをするのではなく、企画そのものを考え、企画を「自分の企画にする」という意識を持たなければならない。人は誰でも、自分ごとに対しては大きな力を出せるからだ。良い企画とは、「幸せになる人の数が多い」企画のことである。
人に何かをお願いするときは、相手に「参加することが楽しみ」と感じてもらえるかを考えることが重要だ。幸せになる人の人数を増やすにはどうすればいいかと考えていけば、多くの人に支持され、笑顔を生み出すデザインができるはずだ。
仕事を面白くするためには、常に童心を持つことが大切だ。著者は、任天堂に勤めていた頃、Jリーグ京都サンガのオフィシャルイヤーブックに掲載する広告デザインを担当することになった。ゲーム機Wiiが発売された直後だったので、Wiiの写真と本体価格だけを出しても広告としては成り立つ。しかし、それだけではつまらない。何か面白くて宣伝になることをしたいと考えた。そこで、選手やコーチの写真を取り寄せ、Miiで作った全員の似顔絵を広告にした。ファンの間で「似ている似ていない」と話題になり、面白さと宣伝を両立させることができた。
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