他人との距離を保つ必要があるコロナ禍において、社会活動の継続を可能としたのが情報通信技術だ。東日本大震災など、今までも多くの天災に対して重要な働きをしてきたが、今回の感染症対策おいて、特に大きな役割を果たした。
これからの情報社会の在り方として、「超スマート社会」(Society5.0)が挙げられる。時空間とサイバー空間が高度に融合した社会を指す。遠隔医療、介護ロボット、自動運転、安定したエネルギー供給と温暖化防止、防災システム、スマート工場、持続可能な産業社会、スムーズな行政サービスなどが具体的な応用例だ。単純なサービス提供にとどまらず、曖昧で抽象的な問い合わせに対して、決められた時間内に最良の回答を出すことがシステム側に求められる。
情報社会では全てのデータを等しく「数」(2進数)として扱うため、一つの情報ネットワークで多様な情報をやりとりすることができる。それは領域の越境を促し、行政、産業、教育、文化、娯楽の連携・一体化が進む。学問・文化では、理学、工学、農学、政治、経済、文学・文芸、哲学、エンタメなど、それぞれの分野を尊重しつつも越境の動きが広がっている。
このように、情報化は身近なところから人間社会の在り方を変革している。Amazonなどのネット通販や、YouTubeによる情報共有などにみられるように、世界のグローバル化を促すものでもあるのだ。
残念ながら、日本では旧来の業務をそのまま踏襲したオンライン化が主流だ。業務の効率化と高度化といった、本来のオンライン化の意味や目的を理解できていないためである。情報システムを導入する際は、非専門家であるユーザ側が情報システムに関するリテラシーを有していることが求められる。
情報教育は子どもだけでなく大人にも必要である。特に大人への教育はプライドの高さや忙しさなどが邪魔をするため、とても難しい。特別定額給付金をめぐる詐欺事件のように、情報教育を受けないと痛い目にあうという教訓が、大人に教育を促すきっかけとなりうる。
本書で紹介される楠正憲CIO補佐官の『情報処理』への寄稿記事によると、システム構築の前に様式が定まっていることから、電子申請であっても紙の申請書と同様の項目で、印刷すれば郵送申請と同様に処理できるよう設計されていた。そのため、手作業による照合をなくすことができず、「10万円がなかなかもらえない」という事態が引き起こされた。
ほかにも、親子で楽しめるプログラミング教室は大人に教育を促すきっかけとなるだろう。既に情報教育のコンテンツも方法論も十分にある。これからは情報教育に人々を向かわせることが必要となってくる。
コロナ禍において、人間同士あるいは人間とモノとの物理的近接をできる限り避けるという考え方が定着した。それは、人々が現実とVR(Virtual Reality)の世界を行き来し、物理的な接触なしに触覚を再現できる、
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