ジョブ型人事制度の教科書

日本企業のための制度構築とその運用法
未読
ジョブ型人事制度の教科書
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日本企業のための制度構築とその運用法
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ジョブ型人事制度の教科書
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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出版日
2021年02月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

これまで日本企業は、非正規雇用の処遇改善や柔軟な働き方の環境整備など、幾度となく「働き方」に関する議論に直面してきた。昨今のコロナ禍もまた私たちの「働き方」を大きく変化させ、今後ますますそうした議論に拍車をかけていくことになるだろう。テレワークがニューノーマルとなりつつあるいま、職務=仕事(ジョブ)型制度へのシフトの波が押し寄せるのは必至だ。

本書を読めば、日本企業が不得意とする組織や職務への向き合い方を知ることができる。ジョブ型制度導入のあり方は企業によって千差万別だ。本書は、著者が所属する組織・人事のコンサルティングファーム、コーン・フェリーがその知見とノウハウを凝縮し、体系化した「教科書」である。

日本企業へのジョブ型制度導入の難易度は決して低くない。人材マネジメントに対する発想がまるで違うからだ。日本企業は「人」ありきで考えるが、ジョブ型制度は「職務」と「人」は切り離して考える。新卒一括採用という独特の雇用慣行があり、ポテンシャル重視の人事を行う日本型組織はそもそもジョブ型制度と相性が悪い。ここをいかに上手く中和し、日本型組織にフィットさせていくかが腕の見せ所となる。

コロナ禍により否応なしに働き方の変化を余儀なくされたが、その変化を逆手にとって組織全体を成長させることは可能だと感じた。むしろ社員一人ひとりが職務と向き合い、期待された役割を強く意識することで会社や組織はさらに発展していけるだろう。本書が人事担当や制度運営の一翼を担う現場責任者にとって心強いガイド役となることは間違いない。

ライター画像
金井美穂

著者

柴田彰(しばた あきら)
コーン・フェリー組織・人事コンサルティング部門責任者 シニアクライアントパートナー。慶應義塾大学文学部卒。PwCコンサルティング(現IBM)、フライシュマン・ヒラードを経て現職。各業界において日本を代表する大企業を主なクライアントとし、組織・人事領域の幅広いプロジェクトを統括。近年は特に、全社的な人材戦略の見直し、社員エンゲージメント、経営者のサクセッション、人材マネジメントのグローバル化に関するコンサルティング実績が豊富。著書に『エンゲージメント経営』『人材トランスフォーメーション』(いずれも日本能率協会マネジメントセンター)、共著書に『VUCA変化の時代を生き抜く7つの条件』(日経BP)がある。

加藤守和(かとう もりかず)
コーン・フェリー組織・人事コンサルティング部門シニアプリンシパル。一橋大学経済学部卒。シチズン時計、デロイトトーマツコンサルティング、日立コンサルティングを経て現職。人事領域における豊富な経験をもとに、組織設計、人事・退職金制度構築、M&A支援、リーダーシップ開発、各種研修構築・運営支援等、ハードとソフトの両面からの組織・人事改革を幅広く経験。社団法人企業研究会記念論文「21世紀の経営とビジネスリーダーの要件と育成」に参画。著書に『生産性向上に効くジョブ型人事制度』(日本生産性本部 生産性労働情報センター)、共著書に『VUCA変化の時代を生き抜く7つの条件』(日経BP)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    同一労働同一賃金の法制化や年功的人事運用が時勢に合わなくなったなどの理由を背景に、報酬を「仕事(ジョブ)」によって決めて適正処遇を実現させようというジョブ型人事制度ブームが起こっている。
  • 要点
    2
    ジョブ型制度の特徴は、人事異動を前提とせず、「現在の職務価値」に応じて処遇を決定する点にある。ジョブローテーションとは相性が悪く、新卒一括採用を行う日本の労働慣行とはギャップがあることを考慮して調整を行う必要がある。

要約

ジョブ型人事制度、ブーム到来

第3次ブームの背景
ChrisGorgio/gettyimages

日本における職務型人事制度の変遷は、第1次成果主義ブーム、第2次グローバル人事ブームを経て、現在、第3次ジョブ型人事制度ブームが到来している。

事業環境の変化が激しく先の未来を予測できないVUCA(ブーカ)の時代では、終身雇用や年功序列は機能しない。「付加価値の高い仕事」をした人に優先的に報いていくことになるのは当然だ。報酬が「仕事(ジョブ)」によって規定されるべきだということは、同一労働同一賃金の法制化により国が明示していることでもある。

高年齢者の雇用に関し、これまで日本企業は再雇用時に報酬を減額することで年功的に積み上がった報酬をリセットしてきた。しかしこのやり方ではシニアの意欲低下を招き、職場全体の士気低迷につながりかねない。そのため、どうにかして年功的人事運用を廃止したいという日本企業の思惑がある。

海外経験を積んだ経営幹部が増えていることもジョブ型制度のブームを後押ししている。海外では高い能力を有していたとしても、相応の役割を担っていなければ高い報酬を得ることはない。そうした幹部らは日本の職能資格制度に違和感を覚え、トップダウンでジョブ型制度を断行する企業が増えているのだ。

ジョブ型制度を導入する狙い

日本企業がジョブ型制度の導入に踏み切る最大の理由は、年齢に関係なく実力に応じた昇格・登用が可能な点にある。職能型制度はポストのない社員のモチベーション維持ができるのがメリットではあったが、同時に年功的な昇格の要因ともなっていた。ジョブ型制度導入には優秀な人材が社外へ流出しないように適正処遇を実現する狙いがある。

仕事の高度化・複雑化は日本企業の育成・人材配置に関する意識を変えつつある。従来は「適材適所」の考え方で多くの人材をプールし、ゆっくり育成しながら能力や資質が生かせる職務に配置してきた。しかし、そうしたやり方は人材投資の面で無駄が多い。職務やポジションに合わせた「適所適材」の考え方が日本企業に浸透しつつある。

スペシャリスト人材の活用という面でもジョブ型制度は有効だ。日本の転職市場の人材流動性が高まったいま、「能力」という曖昧な物差しによる特別処遇でスペシャリスト人材を採用し、定着させるのには無理がある。職務ごとに人材要件を定義することは、ゼネラリスト人材との処遇の違いを明らかにすることにつながる。同時に、より精度の高いスペシャリストの育成をも可能にする。

ジョブ型制度は日本企業で機能するのか

ジョブ型制度と日本の労働慣行とのギャップ
busracavus/gettyimages

ジョブ型制度の導入にあたっては、もともと海外で生まれた仕組みである点を考慮しておかなければならない。日本の労働慣行に馴染まない点があるからだ。

日本ではポテンシャル重視で新卒一括採用を行い、

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要約公開日 2021.05.15
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