欧米と日本の人事システムにおいて、本質的な違いは何だろうか。ポイントは「ポスト」にある。
欧米企業の場合、組織編制は管理職からリーダーやアソシエイトといったヒラ社員まで、売上規模や業務量に応じて、ポスト数がロジックでピシッと決められていく。そして給与はポストごとに決まる。日本のような能力等級はないため、同じ職務なら多少の差はあれども基本的には同じ給料となる。そのため昇給しようと思えば、上のポストに就かなければならない。
ところが、いくら能力を磨いても、上のポストに空きがなければ昇進することはできない。そこで、自社をあきらめて上位ポストの空いている他社を探すか、昇進をあきらめてWLB(ワークライフバランス)にいそしむか、いずれかの道を選ぶことになる。これが欧米企業のJob for Post「職務主義」である。
今回の「日本式ジョブ型」騒動では、「欧米にならって、一人ひとりのジョブディスクリプション(職務記述書・JD)をしっかり定義しよう」といった会話が交わされている。この時点でボタンの掛け違いが起きている。欧米企業の場合、JDはポストにつくものであり、人につくものではない。
さらには、欧米企業のJDが詳細に書かれているというのも幻想だ。そこには「周囲の仕事も手伝う」「書かれていないことは上司の指示に従う」「業務に付随する諸々の問題を解決する」など、曖昧な言葉が頻出している。
そもそもホワイトカラー、特に上級職の仕事(タスク)を細かく記述することなど不可能である。欧米では1980年代に、JDの時代は終わったと言われている。
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