リーダーの「挫折力」

「不連続な変化の時代」を生き抜く
未読
リーダーの「挫折力」
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リーダーの「挫折力」
出版社
出版日
2021年03月11日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「トップダウン型のリーダー」と聞いて、あなたはどんなリーダー像を思い浮かべるだろうか。独善的? エネルギッシュ? はたまた自信家? 人によっては、独裁をイメージするかもしれない。特に日本ではボトムアップ型のリーダーが多く、トップダウン型のリーダーは敬遠される傾向にある。その主な理由は、日本が「空気と協調を重んじる社会」であるからだろう。

例えば会社内での意思決定の場合は、事前に関係各所へ根回しをして、実際の決議はささっと終わらせることも多いだろう。当然根回しも重要だが、このような「調整型の意思決定プロセス」は時間がかかってしまうのも事実だ。コロナ禍をはじめ、社会や経済の環境が目まぐるしく変化する状況下では、素早く決断し、行動することが必要だ。

そういった背景を踏まえて、本書では「挫折」をキーワードに、今あるべきリーダーの姿が語られる。著者の冨山氏は、産業再生機構のCOOを務めた経歴を持ち、数多くの企業の経営改革や再生に携わってきた人物だ。本書には、そんな著者だからこそ書けるリアリティーにあふれたリーダー論・組織論が、凝縮されている。

これから係長や課長になっていく前途ある若手社員、中間管理職として上と下に挟まれながらも奮闘している中堅社員、さらには百戦錬磨の会社経営者にもぜひおすすめしたい一冊だ。それぞれの課題意識に応じた学びが数多く得られることだろう。

ライター画像
小林悠樹

著者

冨山和彦(とやま かずひこ)
経営共創基盤(IGPI)グループ会長。1960年生まれ。東京大学法学部卒。在学中に司法試験合格。スタンフォード大学経営学修士(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、産業再生機構COOに就任。カネボウなどを再建。解散後の2007年、IGPIを設立し代表取締役CEOに就任。数多くの企業の経営改革や成長支援に携わる。2020年10月より現職。同年12月、地方創生を目的とした投資・事業経営会社「日本共創プラットフォーム」(JPiX)設立を発表、代表取締役社長に就任。パナソニック社外取締役。
『コロナショック・サバイバル』『コーポレート・トランスフォーメーション』(以上、文藝春秋)、『IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ』(PHPビジネス新書)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    有事が平時となった今、求められるリーダー像が、ボトムアップ型からトップダウン型へと変わりつつある。リーダーは時には人的犠牲を伴うような意思決定もしなくてはならない。
  • 要点
    2
    リーダーの経験は早ければ早いほどよい。そこで失敗や挫折を経験し、そこから権力の使い方を学ぶことができ、「挫折を愛し、乗り越え、活かしていく力」、つまり「挫折力」を身につけられる。
  • 要点
    3
    真のリーダーとは、権力を上手に使いこなせる人のことである。情と理のはざまで苦悩しながらも意思決定を続ける胆力こそがリーダーに求められる。

要約

リーダーに求められるトランスフォーメーション

有事が平時の時代
GizemBDR/gettyimages

2020年初めに起きた「コロナショック」により、すでに世界の姿は大きく変容している。今後も「有事が平時」の時代となる。そうした時代では、この「変容(トランスフォーメーション)」の考え方がますます重要な意味をもつ。不連続な変化が起きる社会では、過去にとらわれずに柔軟に変容する能力が、個人にとっても会社にとっても重要だ。

そもそも現代の日本企業の形は、戦後復興のなかで形成されてきたものだ。現場主義を尊重し、絶えざる改善を繰り返しながら、高品質なモノづくりを強みとしてきた。大量生産の経済のもとでは、新卒採用・年功序列制をベースとした同質的かつ固定的な組織構造やメンバーシップ雇用などの日本企業の慣行はフィットしていた。だが、現在はどうだろうか。デジタル時代が到来し、ハードからソフトへとメインストリームが移行した。企業に求められる意思決定のスピードも、これまでとは比較にならないほど速くなっている。

しかしながら日本企業は、金融危機や自然災害によるカタストロフィにおいても、「応急処置で止血をしておこう」というような近視眼的な選択をしてきた。そこには「今の危機は一時的な不景気のせい」という甘えがあった。

コーポレートトランスフォーメーション
昨今日本でもよく耳にするのが、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉だ。業務の自動化や会議のIT化といった意味合いにとられることもあるが、DXの真のインパクトはそれにとどまらない。真に求められているDXは、「野球からサッカー」というまったく違う競技へ転向するほどの、産業構造やビジネスモデルの大変容だ。これまでの経営は、攻守が順番に入れ替わり、打順が決まっていて、一球ごとにサインを確認するような野球スタイルであった。いざサッカーへ種目を変えようとしても、組織には野球経験者しかいない。年功序列に手がつけられないので、サッカーができそうな社員をサッカー場に送り込むぐらいしか手だてがない。ゆえに、従来型の日本的経営モデルでは、真のDXは不可能といえる。だとすれば、生き残るためには、会社の形の根本を改革するコーポレートトランスフォーメーションが必要となる。ゲームチェンジに対応する方法はそれしかないのだ。
今はリーダーの時代
gorodenkoff/gettyimages

有事のときには、組織のリーダーにもトランスフォーメーションが求められる。大変革の時代は「リーダーの時代」とも言い換えられるだろう。これまで日本では、トップダウン型のリーダーは独裁者などと揶揄され、敬遠される傾向にあった。だが、トップの意思決定は、「独断」であって然るべきである。

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要約公開日 2021.06.16
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