トヨタの日常管理板 チームを1枚!で動かす

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トヨタの日常管理板 チームを1枚!で動かす
出版社
出版日
2021年02月05日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「目の前の仕事が多すぎて、チームをマネジメントする時間がない……」「夕方になってやっと自分の仕事を開始……」。多忙な日々に追われて、マネージャーとしてすべきことができないと悩んだことはないだろうか。

世界中からその働き方について注目されているトヨタには、この悩みを一気に解決するツールがある。それが「日常管理板」だ。これをうまく運用するとマネージャーのすべきことに注力できる。職場の問題を視える化し、職場目標の進捗状況を日々確認してゆく。チーム一丸となって会社の目標達成に向けて取り組むことを可能にさせてくれる、魔法のようなツールである。

本書は、トヨタに40年以上在籍したベテラン技術者たちがその業務の中で培った仕事術について、日常管理板を軸に解説した一冊である。このツールを運用することで、会社の目標・方針が現場まで浸透するだけでなく、それに基づいた職場の目標、課題解決の進捗状況まで一気に見渡せるようになる。さらには、メンバーの責任感が向上し、人材育成にも役立つ。

在宅勤務が増える中でチームをいかに率いていくべきか、生産性をいかにアップするか、といったことに悩まれている方には、示唆に富んだ内容になっているだろう。また、「改善」「5大管理」などトヨタ流の仕事の進め方についても概説があるので、それを自分の業務に応用したい方にもおすすめである。本書には非製造業への応用例も紹介されているので、あらゆる業種で参考になる部分が見つかるはずだ。

ライター画像
木下隆志

著者

(株)OJTソリューションズ
2002年4月、トヨタ自動車とリクルートによって設立されたコンサルティング会社。トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者(全員が管理職経験者)が「トレーナー」となり、トヨタ時代の豊富な現場経験を活かしたOJT(On the Job Training)により、現場のコア人材を育て、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援する。
本社は愛知県名古屋市。70人以上の元トヨタの「トレーナー」が所属し、製造・食品・医薬品・金融・自治体など、さまざまな業種の顧客にサービスを提供している。
主な著書に20万部のベストセラー『トヨタの片づけ』(図解版、コミック版もあり)をはじめ、『トヨタ 仕事の基本大全』『トヨタの問題解決』『トヨタの育て方』『トヨタの段取り』『トヨタの現場力』『トヨタの習慣』(すべてKADOKAWA)などがあり、シリーズ累計80万部を超える。

本書の要点

  • 要点
    1
    日常管理とは会社の方針・目標を現場が取り組むべき課題に分解して、効率よく行動に移すためのしくみづくりのことである。
  • 要点
    2
    日常管理板とは、日常管理の仕組みをわかりやすく1枚のボードに反映させたものである。会社の方針・目標を現場が取り組むべき行動に分解して、①方針・目標、②管理指標、③改善・問題解決のテーマと進捗をまとめている。
  • 要点
    3
    日常管理板は、まず方針・目標を決定し、その達成に向けた管理指標を決めたあと、管理指標の目標値を設定することで作成できる。

要約

日常管理とは?

トヨタの3ステップ
lemono/gettyimages

会社方針や目標が示す「経営層が向かいたい方向」に対して、社員一人ひとりが自分の仕事として「何に取り組むか」がしっかり浸透している状態が理想である。そこで出番となるのがトヨタの日常管理板である。

トヨタの考える「日常管理」とは、「会社方針や目標を、日々、現場が取り組む課題にブレークダウンし、効率よく実行する」ためのしくみづくりのことだ。その進め方には3つのステップがある。

1つ目は「会社方針を決定・明示する」こと。経営層が現場の実態を理解しておくことがポイントとなる。

2つ目は「職場方針を決定・共有する」こと。各部課のマネージャーは、会社の方針・目標を達成するための方法を上司や部下と相談し、部課の役割にあった職場方針をつくる。これは、下の部署にいくほど具体的な内容となる。

最後のステップは「管理指標を設定し、2つのサイクルで改善を進める」ことだ。管理指標とは「計測対象を決めて数値を日々記録し、その数値がいくつになったときに、方針や目標が達成できたとみなすか」という客観的な基準のことである。たとえば「職場災害ゼロ」が目標ならば、「医務室の利用者数」や「医薬品の消費量」などが管理指標となる。この数値をゼロに近づけていく。そして、これを職場の改善と同時に進めていく。

つまり、管理指標には2つのサイクルがある。客観的な基準をもとに「方針・目標が達成できたか」を確認して管理する流れと、職場の全員で問題解決に取り組んでいく流れだ。

そうして現場の身近な問題までブレークダウンできたら、あとは実行あるのみ。改善によって問題が解決されると、管理指標がクリアされる。すると、職場方針も達成できる。これは、会社方針の達成にもつながる。そして自然な結果として、会社の利益が創出される。

トヨタの日常管理とは、ボトムアップで成果を連鎖させていく循環的なしくみなのだ。

日常管理板とは?

職場を1枚でまとめる

日常管理の流れを1枚のボードにまとめたものが「日常管理板」である。横列には「安全」や「品質」といった「取り組みたいジャンル」を書き入れる。そして縦列には、①方針・目標、②管理指標(①を達成するための目標数値や達成状況、推移など)、③改善・問題解決のテーマと進捗の3つを記す。こうすることで、「経営層が目指しているもの」と「現場が取り組んでいること」が明確にひもづくようになる。

この日常管理板があると、全社的な目標を実現するために一人ひとりが何をするべきかが明確にわかるようになる。経営層と現場に一体感が生まれ、一人ひとりが自分の貢献度を管理指標の数値で実感しやすくなることもメリットだ。

運用の6ステップ
Jesussanz/gettyimages

トヨタでは次の6つのステップで日常管理板を運用している。

①会社方針に沿った職場方針・目標を立てる。

②①のためにクリアすべき管理指標(達成するための数値目標)を設定する。

③②をクリアするために、改善活動を行う。

④日々、管理指標の数値の推移をチェックする。

⑤③④の結果、効果のあった改善は「標準化」する。

⑥⑤が遵守できているか、日々チェックして、仕事の質を維持する。

まずマネージャーは、自分の部署や役職が担うべき役割を明らかにし、チームメンバーが何をすべきかを視える化する必要がある。これが日常管理板に明示されていると、マネージャーとメンバーのすれ違いを正すことができるようになる。

仕事が「視える」と何がよいのか

日常管理を運用することで職場にもたらされる様々なメリットについて、もう少し詳しく見てみよう。

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要約公開日 2021.06.22
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