今、働き方に対する日本人の意識は大きく変わりつつある。長寿化によって一人ひとりの働く期間が長くなったことや、ビジネスの変化のスピードが速くなったことなどがその要因だ。バブル崩壊以前、多くの会社員は長期雇用が保証され、給与は右肩上がりだったが、今や成果を出せなければ生き残れないようになっている。
このような状況において、「転職」は「当たり前」の選択肢になりつつある。就職した会社でずっと働くことが前提ではなく、転職は「キャリアの選択肢の一つ」になっているのだ。
転職は、なかなか学ぶことができないものだ。その結果、転職によってキャリアが「遭難」「沈没」する例が後を絶たない。
現代の日本において、転職が学びにくい理由は次の3つだ。
まず、「学校では教えてくれない」。高校や大学ではキャリア教育が行われるようになったが、その多くは仕事への意識づけや就職ガイダンスであり、社会人になってからの「転職」を学ぶものではない。
次に「他者の経験談に頼れない」。転職は他者の経験談を聞きづらく、そもそも他者の経験談があまり役立たない領域である。また世代によっては、いまだに転職に対するネガティブなイメージが根強くあり、転職そのものをやめるように説得されることもあるだろう。
最後に、「後戻りできない」。転職後に転職前の状況に戻ることは難しい。ほんとうに転職に成功したかどうかを実感するのは、新たな職場でしばらく働いたあとだ。教訓を得るまでには長い時間がかかる。
以上の理由から、多くの人は転職を「学ばない」まま実行することとなる。そしてその結果、「アンハッピーな転職」が量産されてしまう。
著者は1万2000人に調査をして、転職する人がほんとうに求めている客観性と有用性を提供する「転職学」という講義をつくった。転職学における第一のスタンスは、転職は「プロセス」であり、一過性の「イベント」ではないということだ。転職とは離職から転職活動、そして入社、組織順応に至る一連のプロセスを指し、「内定」をゴールにするものではない。
3,400冊以上の要約が楽しめる