従来の転職、つまり転職1.0では、「1回の転職の成功」自体が目的だった。ほとんどの会社が終身雇用を採用し、人生で転職をするのは多くても1回という時代には、1回の転職での成功に大きな意味があったからだ。
しかし、会社の寿命より個人の労働寿命のほうが長くなり、職業人生において何度も転職するのが一般的になりつつある。転職2.0では転職の目的はあくまでも「自分の市場価値を最大化するための手段」である。
こうして転職の「目的」が変わると、「行動」「考え方」「価値基準」「人間関係」も変わってくる。本書では転職2.0が転職1.0とどう違うのか、この5つのキーコンセプトに分けて解説していく。
1つ目は目的についてだ。転職1.0では、「1回の転職での成功」を目的としていた。これに対し転職2.0では、転職は自分の市場価値を高める「手段」となる。
2つ目の行動についてはどうか。転職1.0では「情報収集」がメインとなるのに対し、転職2.0では「タグ付けと発信」によって自分の希少価値を高めていく。「タグ付け」とは個人を想起させるためのフックとなるキーワードをつけることである。タグは「ポジション(役割)」「スキル」「業種」「経験」「コンピテンシー」に分類できる。たとえばタグの例として、「法人営業」や「インサイドセールススキル」が挙げられる。転職活動の際は、市場価値を高めるためにどんなタグを掛け合わせたらいいかを考えるとよい。またタグをSNSで発信することで企業からのオファーも呼び込める。
3つ目は考え方についてだ。転職1.0では、やみくもにスキルを身につける「スキル思考」で考える。これに対し転職2.0では、目指すポジションから逆算してキャリアを考える。これを「ポジション思考」と呼ぶ。目指すポジションや役割を明確にし、そのポジションに近づくためのスキルを得るというものである。ジョブ型中心となるポスト終身雇用の時代では欠かせない考え方だ。
つづいて4つ目の価値基準については、転職1.0では仕事を「会社」で選ぶ。一方転職2.0では、個人と会社が相乗効果(シナジー)を生み出せるかどうかで企業を選ぶ。
5つ目の人間関係についてはどうか。転職1.0では狭く深い「人脈づくり」を重視する。これに対し転職2.0では、広く浅い「ネットワークづくり」を重視する。ネットワークとは、友達の友達の友達くらいまで含んだゆるやかなつながりを指す。ネットワーク内で自分が認知されれば、人を介して企業からオファーが舞い込む可能性も出てくる。
こうした転職2.0の新ルールを知れば、企業に対して条件を交渉するための武器を持つことができ、我慢しない働き方が可能となる。
納得いく転職を実現するための第一歩は、自分の市場価値を把握することである。
市場で自分がどう評価されるのかを知るには、転職エージェントの担当者やキャリアコンサルタントに会うのがおすすめだ。
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