自分の内面を客観的、批判的に振り返るリフレクションは、あらゆる経験を学びに変え、自分をアップデートし続ける力がある。しかし、ただやみくもに取り組んでも意味はない。リフレクションを実践する前に、「認知」の枠組みを整理するフレームワーク「認知の4点セット」を押さえよう。
このフレームワークでは、事実や経験に対する自分の判断を「意見」「経験」「感情」「価値観」の4つに切り分けて可視化する。それによって、メタ認知(認知していることを認知する)力を高めることができる。
経験を振り返るとき、その経験をどう意味づけるかは、それぞれの人の認知が決めている。認知は事実や経験の中から、ある特定の事実を知覚するところから始まる。そして、知覚した事実をどう捉えるか(判断)は、過去の経験や知識によって蓄積されたものの見方に依存している。
たとえば、犬を「好き」という認知に「認知の4点セット」を適応してみよう。犬が好き(意見)な人は、犬に接する(経験)などのポジティブな経験より、「犬はかわいい」というものの見方(価値観)が形成される。そして犬を見ると喜び(感情)を感じ、近づきたくなる。しかし犬が嫌いな人は、噛まれる・追いかけられるなどの怖い経験から「犬は危険」と捉え、犬を見ると逃げたくなる。同じ犬を見ても、認知は人によって異なるのである。
リフレクションも認知の影響を受けている。自分が何を知覚しどのような判断をしたか、その背景にある認知の4セットを知ることで、自分のリフレクションを俯瞰することが可能になる。
「認知の4点セット」は、日常では一緒くたに考えてしまいがちな、意見の背景にある経験・感情・価値観を切り分けて考える。この4つを切り分ける習慣は、自己理解を深め、自分を変える力を高める効果がある。
たとえば、リモートワーク下で久しぶりに部下と1on1を行った上司の経験は、次のような切り分けになる。
意見:リモートワークの方がコミュニケーションを大事にする意識が働き、部下との信頼関係が高まったかもしれない。
経験:互いの自宅からリモートで行い、ゆったりとした気持ちで話すことができた。いつもより丁寧に質問し、傾聴もできた。
感情:驚き、安心
価値観:支援、信頼関係
「意見」には「考えや学び、思ったこと」を、「経験」は「意見の背景にある経験」を記入する。「感情」は「その経験に対して抱いた感情」を入れる。ここは意見を入れずに、感じたことを書こう。そして最後の「価値観」では、「判断に用いた基準、ものの見方」を定義する。
ここからは「認知の4点セット」を使ったリフレクションの基本メソッドを紹介する。5つのメソッドのうち、要約では3つを抜粋する。
まず「自分を知る」である。自分を突き動かす大切な価値観は何か? 動機の源である「内発的動機」を把握しておけば、どんなときでもモチベーションを自ら動かすことが可能になる。
動機の源とは、やりがいや喜びを感じる理由である。私たちは一人ひとり異なる動機の源を持っている。たとえばチームのプロジェクトが成功したとき、誰もが成功を喜んでいても、その理由はそれぞれ違っているはずだ。
動機の源が何か、「心」はすでにわかっている。それが満たされたときは「やりがいや喜び」を感じ、満たされなければネガティブな気持ちを感じているはずだ。自分を知るリフレクションでは、「なぜそんな気持ちになったか」を言語化する。
動機の源を探る方法の一つに、「日常の出来事を題材にしたリフレクション」がある。まずは取り組みやすい題材である「やりがいを感じた仕事」でリフレクションをしてみよう。たとえば、次のような例になる。
意見:やりがいを感じた仕事をひとつ挙げる→受注獲得
経験:それはどのような経験だったか→初の大型案件、部内メンバーの応援もあり成果を出せた。
感情:どのような気持ちだったか→嬉しい、達成感
価値観:そこから見える、自分が大切にしている価値観→協力、仲間、感謝
ここで大切なのは、感情の理由、価値観を探求することだ。これを習慣化すると、自分が大切にしているものが見えてくる。
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