デジタル時代のマーケティングにおいて、「テレビなどの旧メディアはオワコン(終わったコンテンツ)だ」「莫大な予算がかかるテレビ広告を見直して、デジタルにシフトしたほうがいいのではないか」とよく言われる。たしかに、消費者のデジタルメディア利用は増えているが、旧メディアが役割を終えたと考えるのは早計だ。実際、コロナ禍で自宅にいる時間が増えた結果、テレビの視聴率や広告リーチが大きく伸び、テレビメディアの価値が見直されている。どちらか一方だけを選ぶのではなく、「誰にどのようなメッセージをどう届けたいか」という観点から、マスメディアとデジタルメディアを使い分けていくことを考えるべきだ。
そこで必要なのは、各メディアの特性を正確に捉えておくことだ。メディアごとの特性や費用対効果を考慮に入れて、目的に応じて使い分けたり、足りない部分を補完して相乗効果を出したりと、最適な組み合わせを考えよう。
「顧客の声を聞いて既存製品の改良や新商品の開発をすれば、売れるものができる」という誤解もよく聞かれる。だが顧客は、わかっていることしか言わないし、見たこともないものには反応できない。iPhoneの発売当時、「電話にiPodの音楽再生機能や、コンピューターをつけたら、どう思いますか」と聞いても多くの人が理解できなかっただろう。
顧客の声に対応しているだけでは、決してイノベーションは生まれない。マーケターがすべきことは、顧客自身が言語化できていない潜在的なニーズを探り、具体的な製品やサービスにつなげるアイデアを出すことだ。
顧客の行動や心理を理解するための手法として、カスタマージャーニー分析がよく用いられる。これは、ある顧客の考えていること、思っていること、行動などを、購買前から事後に至るまで時系列で整理し、それぞれのタッチポイント(接点)で有効な施策を考える手法だ。打ち手を顧客視点から検討する際に役立つ。
ところが、そこには2つの落とし穴がある。
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