コロナショックにより、現代社会の歴史上、初めて人の流れが止まった。「人と人が直接接することはNG」とされる中、特にサービス業は大きな打撃を受けている。2020年4月からの緊急事態宣言が明けてからも、顧客が戻っていない店や企業は多い。
実はコロナ禍において、顧客は「選別」を行っていた。今までなんとなく通っていた店に行けなくなったことで、「これからも行きたい店」「特に行く必要はない店」を意識的に、もしくは無意識的に選別したのだ。そうした選別が行われた結果、心が豊かになるものでもコスパのいい生活必需品でもない、中途半端なものは選ばれなくなった。心が豊かになるものはコロナ禍でもほとんど売上が落ちていない一方、「心が豊かになるわけではないが、生活必需品でもないもの」は見向きもされなくなってしまっている。
顧客は今、単なるモノではなく、心を豊かにしてくれる、ときめくモノや場所を求めている。だから逆に、「心が豊かになる」ビジネスを展開している会社にとっては、コロナショックは大きなチャンスとなり得る。
名古屋のある高級レストランは、緊急事態宣言下の2020年4月、売上が前年比150%を達成した。もちろん、コロナで打撃を受けなかったわけではない。緊急事態宣言が出されると予約は一気に白紙になり、休業に追い込まれた。そこで高級弁当を開発し、SNSで顧客に周知したところ、大量の注文が入ったのだ。
新大阪のあるバーでは、深夜営業ができない緊急事態宣言下において、前年と変わらない売上を維持した。このバーが行ったのは、おつまみの通販とテイクアウトを開始し、約500人の顧客にハガキで告知することだった。
コロナ禍でも売上を維持した両者の共通点は、フローではなくストックの顧客をもっていたことだ。フローとは流動性の高い一見客で、ストックとは動きの少ない常連客を指す。コロナショックの影響を受けなかったのは、ストック型ビジネスの企業や店舗だった。
ストック型ビジネスにおいては、顧客リストが資産となる。コロナショックのような危機にあっても、顧客リストがあれば手の打ちようがある。企業にとって顧客リストは、現代のような変動期にあっても価値が失われない、最強の資産であるといえるだろう。
BtoBビジネスにおいても、「フローからストックへ」は、アフターコロナを生き抜くためのキーワードとなる。BtoBビジネスにおける「フローからストックへ」のわかりやすい例として、卸や小売店を介さず、最終顧客に直接販売する「メーカーによる直売」が挙げられるだろう。
では、最終顧客とのつながりを持つにはどうすればいいか。
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