会議は、顧客を創造する目的で行われるべきだ。会議が組織のほうを向いて、答え合わせや妥協ばかりになってしまっては意味がない。
顧客創造という目的に向かうためには、部署や立場の異なる人たちの中にあるイメージを引き出し、重ね合わせ、解像度を上げていくことが大切だ。そのためには、進行役や書記役などといった役割分担ではなく、「理想」「現実」「推進」の3つの立場に分かれるようにするとよい。
理想脳を担うのは、中小企業なら社長や次世代リーダー、中堅~大手企業なら執行役員や事業部長、部門リーダーといった人々だ。現実からいったん離れて、自分が実現すべき世界を突き詰めて考えてもらう。
現実脳を担う人は、「企画担当」や「営業担当」の従業員であったり、社外で実務を担当する士業やクリエイターであったりする。理想脳が考える世界を、スキルや知識を用いて実現する役割だ。この役割は、理想脳に忖度せず、ときに理想脳のイメージを変える提案をすることも必要だ。「顧客視点から考えるとこちらのほうがいいように思います」などと、現状がよりよくなるようなイメージを伝える。
推進脳を担うのは、経営企画担当やプロジェクトマネージャーといった人たちだ。理想脳と現実脳のイメージを膨らませ、すり合わせ、アウトプットを引き出していく。それぞれの頭を動かす指揮者であるともいえるだろう。
会議では、それぞれの頭の中にあるイメージをやり取りしながら話すので、相手のイメージを正しく理解することが大事である。そのためのスキルのうち、2つを紹介しよう。
まず、思考を「翻訳」すること。馴染みのない概念を前にすると、誤解してしまったり、イメージが湧かなかったりすることがある。カタカナ英語や四字熟語にはとくに注意だ。「ドラフト」→「素案」、「コンセプト」→「一番大事にしている考え」というふうに、イメージしやすい表現に変換するとよい。
それから思考を「要約」すること。発言から様々な情報がインプットされたとき、それらの中から頭に残しておくべきイメージを抽出しなければならない。会話の全てをメモに取るのではなく、たとえば「製造ラインの実現が商品決定のカギ」というように、ひと言で大事なことを残すクセをつける。字面をわかりやすくまとめるのではなく、本当に残しておくべきイメージを絞り込むことを優先しよう。
ディスカッションの基本の型は、(1)ディスカッションの基になるイメージ(素案)を共有する、(2)素案に対する違和感や解像度の低い部分をチェックする、(3)解像度の高いイメージ(仮説)を作る、という3つの段階をふむ。
(1)は理想脳を担う人の仕事だ。考えるべき要素と、それに対する自分なりの理想を共有する。商品企画であれば、「誰に、何を、どこで、いつ、どのように、いくらで」といった要素だ。素案段階なので、自信がない部分があってもかまわない。
(2)は推進脳を担う人が中心となって進める。メンバーの視点を借りて、違和感などがないか確認する。
(3)は現実脳を担う人の仕事だ。自分の頭にあるイメージを出しつつ、素案をより解像度高く、面白いものへと進化させる。
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