メンバーの頭を動かし顧客を創造する

会議の強化書

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出版社
出版日
2021年09月22日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

会議の時間を有効に使うのは、簡単ではない。合意形成ができればとりあえず合格点、と思っている方も多いのではないだろうか。しかし「会議再生屋」である著者は、単なる答え合わせで終わる会議、忖度や根回しが横行する会議ばかりでは、日本はダメになると嘆く。組織の頭脳をうまく使って新しい顧客を創造する、ダイナミックな活動こそが会議であり、そのような会議をやっている企業は1割もないという。

本書は、会議での正しい「頭の使い方」を具体的に提示するものだ。会議での役割分担やディスカッションの型を紹介するとともに、方針・企画・実行・検証・改善、それぞれについて話し合う場面でどう実践すればよいのかを説明する。著者がかかわってきた企業の改善事例が豊富に示されており、読者は、自分の組織と似たようなケースをなにかしら発見するのではないかと思われる。そして、発展的な会議をするための具体的なコツをいくつも学べるだろう。

本書は、「ほとんどの人がやっているつもりでできていない」「結果に結びつかない」会議の問題点を指摘し、改善を促す内容だ。新社会人からベテランまで、どんな人でも気づきを得られるだろう。昨今はオンライン会議も増えて、会議の効率や成果にはこれまで以上に焦点が当てられている。本書を使って、自社の会議にあらためて目を向けてみてはいかがだろうか。

ライター画像
小日向悦子

著者

高橋輝行(たかはし てるゆき)
会議再生屋
1973年東京生まれ。東京大学大学院理学系研究科を修了後、博報堂にて教育エンタメ系企業の広告・PR・ブランディングを実施。その後、ベンチャー企業を経て経営共創基盤(IGPI)でぴあの経営再建を主導。2010年KANDO株式会社を創業。会議を使った価値創造の組織マネジメント手法を開発。中堅・中小企業を中心に100社以上の新商品/ 新事業開発を推進。座右の銘は「知行合一」。桜美林大学大学院 MBAプログラム 非常勤講師、デジタルハリウッド大学メディアサイエンス研究所 客員研究員。
著書に『ビジネスを変える! 一流の打ち合わせ力』(飛鳥新社)、『頭の悪い伝え方 頭のいい伝え方』(アスコム)他。

本書の要点

  • 要点
    1
    会議は、顧客を創造するものであるべきだ。そのためには、考え方の役割を「理想」「現実」「推進」の3つに分けて、メンバーの頭脳を効率的に使う必要がある。
  • 要点
    2
    ディスカッションの基本の型は、「理想脳」が素案を考え、「推進脳」が解像度の低い部分や違和感のある部分をチェックして会議をリードしながら、「現実脳」が魅力的な仮説に進化させるというものだ。
  • 要点
    3
    方針を打ち出し、実現すべき世界観と目標数字を定めるのは、トップの役割だ。企画担当にイメージのバトンがうまく渡るように、会議で相手の認識を確認しながら丁寧に情報共有しよう。

要約

メンバーの頭を武器に変える「思考のフレームワーク」

「理想」「現実」「推進」の頭を使い分ける
mokuden-photos/gettyimages

会議は、顧客を創造する目的で行われるべきだ。会議が組織のほうを向いて、答え合わせや妥協ばかりになってしまっては意味がない。

顧客創造という目的に向かうためには、部署や立場の異なる人たちの中にあるイメージを引き出し、重ね合わせ、解像度を上げていくことが大切だ。そのためには、進行役や書記役などといった役割分担ではなく、「理想」「現実」「推進」の3つの立場に分かれるようにするとよい。

理想脳を担うのは、中小企業なら社長や次世代リーダー、中堅~大手企業なら執行役員や事業部長、部門リーダーといった人々だ。現実からいったん離れて、自分が実現すべき世界を突き詰めて考えてもらう。

現実脳を担う人は、「企画担当」や「営業担当」の従業員であったり、社外で実務を担当する士業やクリエイターであったりする。理想脳が考える世界を、スキルや知識を用いて実現する役割だ。この役割は、理想脳に忖度せず、ときに理想脳のイメージを変える提案をすることも必要だ。「顧客視点から考えるとこちらのほうがいいように思います」などと、現状がよりよくなるようなイメージを伝える。

推進脳を担うのは、経営企画担当やプロジェクトマネージャーといった人たちだ。理想脳と現実脳のイメージを膨らませ、すり合わせ、アウトプットを引き出していく。それぞれの頭を動かす指揮者であるともいえるだろう。

相手のイメージを正しく理解する

会議では、それぞれの頭の中にあるイメージをやり取りしながら話すので、相手のイメージを正しく理解することが大事である。そのためのスキルのうち、2つを紹介しよう。

まず、思考を「翻訳」すること。馴染みのない概念を前にすると、誤解してしまったり、イメージが湧かなかったりすることがある。カタカナ英語や四字熟語にはとくに注意だ。「ドラフト」→「素案」、「コンセプト」→「一番大事にしている考え」というふうに、イメージしやすい表現に変換するとよい。

それから思考を「要約」すること。発言から様々な情報がインプットされたとき、それらの中から頭に残しておくべきイメージを抽出しなければならない。会話の全てをメモに取るのではなく、たとえば「製造ラインの実現が商品決定のカギ」というように、ひと言で大事なことを残すクセをつける。字面をわかりやすくまとめるのではなく、本当に残しておくべきイメージを絞り込むことを優先しよう。

メンバーの頭を強く動かす「ディスカッションの型」

素案から仮説を作り出す

ディスカッションの基本の型は、(1)ディスカッションの基になるイメージ(素案)を共有する、(2)素案に対する違和感や解像度の低い部分をチェックする、(3)解像度の高いイメージ(仮説)を作る、という3つの段階をふむ。

(1)は理想脳を担う人の仕事だ。考えるべき要素と、それに対する自分なりの理想を共有する。商品企画であれば、「誰に、何を、どこで、いつ、どのように、いくらで」といった要素だ。素案段階なので、自信がない部分があってもかまわない。

(2)は推進脳を担う人が中心となって進める。メンバーの視点を借りて、違和感などがないか確認する。

(3)は現実脳を担う人の仕事だ。自分の頭にあるイメージを出しつつ、素案をより解像度高く、面白いものへと進化させる。

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要約公開日 2022.01.13
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